2019年年度プライムタイムエミー賞(第72回)において、コメディ部門の作品賞と主演女優賞を受賞した『FLEABAG』。
現在、Amazonプライムビデオではシーズン2まで配信されており、今回エミー賞を獲得したのは、シーズン2ではありますが、まずはシーズン1を完走したので、この作品が多数あるドラマの中から作品賞を受賞するに至った魅力をお伝えしていきたいと思います。
【FLEABAG】=不愉快な人
主人公の、FLEABAGを演じるのは、フィービー・ウォラー=ブリッジ(Phoebe Waller-Bridge)←フィービー・ウォーラー、フィービー・ウェラーなど表記がたくさんある。は、イギリスの脚本家であり女優。
今回のFLEABAGも脚本と主演を兼ねています。
脚本家としてのキャリアも着実に重ねていてドラマでは『キリングイブ』、来年満を持して公開される、007の新作『NO TIME TO DIE』(原題)でもライターとして参加しています。
FLEABAGと呼ばれる彼女は、ロンドンで閑古鳥の鳴いている小さなカフェを経営するアラサーと思しき女性。
彼女の人間関係に焦点が当てられたドラマで、色々な人との関わりの中で彼女の人柄や闇がドラマを通して浮き彫りになってきます。
主に、親友、姉、父、父の再婚相手、そしてボーイフレンドたち。
いい感じに腹が立つ継母役を演じているのは『ザ・クラウン』の新シリーズでエリザベス女王を演じる、オリヴィア・コールマンです。
彼女の演技はさすがでした。
25分前後のエピソードが6話で構成されているため、時間的にはさくっと観られますが内容は割と深いです。
Amazonのあらすじには ”抱腹絶倒かつ辛辣なドラマである” って書いてあるのですが、抱腹絶倒はしないかなぁ・・。
抱腹絶倒って『腹を抱えてひっくり返るほど大笑いすること』だし、笑いすぎて腹筋痛くて涙も出てきちゃうぐらいの出来事なんて、もうこの年だとオリンピックぐらいの周期だよ(笑)
日本人が、”抱腹絶倒”を期待して観ると「全然、面白くないじゃん!!」ってなるかもしれないです。
そういう姿勢で挑まないほうがいいということはお伝えしておかねばなりません。
そもそも、わたしは【イギリスコメディ】と謳われているもので、ゲラゲラ笑ったことは一度もない。
イギリスの有名コメディアンのリッキー・ジャーヴェイスが製作・主演の『デレク』と『After Life/アフター・ライフ』は、笑うどころかもれなく号泣だし、彼の1時間以上に及ぶスタンダップショーでも一度も声を出して笑わなかったです。
英語のニュアンスがわかればもっと面白いのかもしれないけど、ネタが笑うような内容じゃなかった。
今年、界隈で話題になったブロマンスコメディ『グッド・オーメンズ』も、面白かったし、色々素晴らしかったし、癒やされはしたけど、笑うって感じではないです。
そういったわけで、イギリスコメディードラマは風刺ベースのものが多くあり、何個か観ているうちに、イギリスの笑いは風刺が基本なんだろうということがわかってきた。
風刺は日本的にいえば不謹慎なことも多く、馴染むには、慣れも必要なので、コメディと一言で括るには難しく感じます。
そんな感じなので『FLEABAG』も観る人や育った環境によってかなり感想が変わりそうです。
少なくともわたしはコメディ作品?って感じだったけど、『コメディ部門』の作品賞だから、欧米ではすごく面白いんだろうなとは思う。
もちろん、ドラマとしては斬新で見応えがありました。
というわけで、下記に個人的な感想を書いていきたいと思います。
ストーリーには触れていませんが、ネタバレっぽくなっているかもしれません。
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一言でいうと、女として生きていればこういう感じになることあるよな・・ っていうドラマなので、 ある程度人生を経てきた女性には響くんじゃないかなと思うんです。
男性が観ても面白いとは思いますが、主人公が女性なので女性の方が感情移入しやすいはず。
なんていうんだろう。
敢えて、事態をめんどくさくして不幸を招いてしまう時期
っていうのが、多かれ少なかれ人生に一度は必ず訪れる気がする。
そういう遅れてきた反抗期みたいな揺れ動く心情が、皮肉と性を交えて描かれています。
思い返すと自分にもそんな時期があったような気もするし、もしかしたら今も内面的には大差ないのかもしれないと思ってしまった。
周りにもそういう友達が居るような、居ないような。
そういう、居なさそうでいて誰しも思い当たる節のあるような行動をとるのがFLEABAGです。
勝手に一人で孤独感を感じ、差しのべられた手を素直に取ることができない。
周囲の人にもバリアを張って心を開けないし、人を不愉快にさせていることが自分でわかっているにも関わらず、虚勢を張ることで自分を保っている。
人の前では人を不愉快にさせて弱みを見せないようにしているけれど、一人になると悲劇のヒロインになってしまう。
自分で自分の内面に向き合うのが怖くて、一歩踏み出せない。
闇が表面化してしまい、事実として認めてしまうと自分が壊れてしまうのから、先に進みたいけど進むのが怖い。
認めなければ辛くない、前にも進まなくていいっていう微妙すぎる感情を、脚本と演技で観ている人にわからせるって、天才かっ!
そう、FLEABAGはものすごく痛々しい。
本人は痛々しいと思われたくなくて一生懸命頑張っているんだけど、観ているこっちがイタタタ・・ってなるぐらいの痛々しさ。
FLEABAGを演じるフィービーは自分で脚本も書いているだけあり、魅せ方がよくわかっているので余計に自分がそうだったような時期と重ねてしまい、辛くなる。
カメラワークとか、語りとか全てがそこに繋がっていたと思う。
そして、シーズン1全てのエピソードを使い、痛々しさを描く思い切りのよさが凄い。
ドラマとしては短い枠とエピソードの中、きっちり6話でシーズン1を着地させていました。
終わったあとの視聴感は悪くなく、イギリスっぽい感じ。
ただし、全体的は下ネタも多いというか、ほぼ下ネタなので、あんまり人と観ないほうがいいかもです(笑)
この下ネタ中心なことも彼女の闇に繋がっている部分ではあるんですけど。
とにかく、このドラマは全体的に、それぞれの登場人物の人物描写がとてもうまくて感心しました。
ちょびっとしか出なかった人たちもきちんと記憶に残っているもんなー。
シーズン2はこれから観る予定ですが、イギリスドラマ的には泣ける方向にシフトしていくんじゃないかなぁと思うし、そういうふうになってほしい希望がある。
FLEABAGを始め、シーズン1で登場した人たちがこの先どんな方向に人生を展開させていくのか非常に楽しみですね。
個人的にはFLEABAGの姉のクレアも、客観的にはかわいそうじゃないんだけど、主観的にはとてもかわいそうなので、健康的に過ごす感じが観たいです。
人間として最低な部分も含めて、人間らしいドラマでした。
シーズン2も完走したらまた報告に来ますね。
それでは、また。
シーズン2の感想はこちら
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