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【映画】ミス・シェパードをお手本に 感想 イギリスの大御所女優、マギー・スミスの渾身の演技に圧倒されてください。

『ミス・シェパードをお手本に』原題 『The Lady in the Van』

 

ネットフリックスで配信されていたのですが、「ポスターが可愛かったから」という、完全な【ジャケ見】です。

この記事で紹介しているAmazonのポスターよりポップな色合いで、ロゴもポップで、イギリスの大御所女優、マギー・スミスをセンターに据えていることから、老女と家族、もしくは近所の人々との交流を描くポップな明るい映画だと思っていたのです。

邦題もなんとなくそういう印象を受ける感じだと思う

 ちなみに、観始める前のイメージは、豪傑で明るい、未亡人の老女(マギー・スミス)が、悩める人々と交流することで、周りの人たちを一歩前向きな未来に導くストーリー・・。

 少なくとも、わたしはそう思って観始めました。

だって、ミス・シェパードを『お手本』にするのでしょう?

 

 

 

 

約2時間後・・・。

 

ウィキペディアに、また【コメディ】って書いてたけど、これコメディ?

っていうあるある疑問、そしてどちらかというと、【ヒューマンドラマ】じゃないか? 実話が元のお話しだし・・と、また映画のジャンルのくくりつけに疑問を抱いた形になってしまったのですが、タイトルに関しては、邦題をつけた人が、この映画を観て、彼女をお手本にしたい部分があったんだろうなー・・

でも、お手本っていうか・・。

なんか、ちょっとそれは違う気がしてしまって、タイトルに違和感を感じた余韻になってしまったんですよね。

ぐずぐず言っても仕方ないし、他にうまい言葉が見つけけられなかったので、はっきり言いますが、ごめん、わたしには【お手本】にしたい部分がどの部分なのかわからなかった。

それはもう、価値観の問題だと思いますので、人によっては、人生の指針を示す作品になるのかもしれません。

 

ただし、ひとりの女性が歩んだ人生を、強く、悲しく、そして美しく描いた、作り手のミス・シェパードに対するリスペクトが感じられる作品ではありました。

 

実際のストーリーは、イギリス、ロンドンの劇作家、アラン・ベネットの実話を基にしたお話で、古びたバンを拠点に色々移動しながらロンドンで路上生活をする偏屈な老女が、近所の人たちと適当な距離を取りながら自由に暮らしていたところ、いよいよそれも行政的に危うくなり、アランが手を差し伸べてしまったことがきっかけで、15年間彼の家の庭先で彼女の面倒を見ることになってしまうという物語。

 

劇作家の作品なので、元々は舞台。

この作品を観るまでは知らなかったのですが、マギー・スミスは、元々は舞台畑の女優さんみたいですね。

16年間も舞台でミス・シェパードを演じたそうなので、日本でいえば森光子の『放浪記』のような、彼女を代表する作品なのだと思います。

舞台で主演を演じたマギー・スミスと、その相手役(?)である劇作家役を演じた男性俳優二人がそのまま映画でも同じ役を演じたそうですが、出演人数も割と少ないので、舞台っぽいといえば舞台っぽい映画ではありました。

 

まず、この作品で一発目に驚いたのが、前述の通り、ロンドンで路上生活をする老女をマギー・スミスが演じていたっていうことです。

ポスターからは全然想像しなかった、作品内でのリアルすぎる路上生活老女!

イギリスでは当然の配役なのかもしれませんが、わたしにとって、マギー・スミスといえば、超有名作品、『天使にラブ・ソングを』での厳格な修道院長であり、ダウントン・アビーの伯爵夫人であり、イギリス女優の超大御所というイメージでした。

日本の芸能界だったら、あまり想像できない感じのキャスティングだと思うのですが、それだけイギリスで、【ミス・シェパード】とその作品に対する敬意的なものがあるのだと思いました。

 

ストーリーは、前述のあらすじ通りなのですが、マギー・スミスの演技ももちろん素晴らしく、後で後述させてもらうのですが、劇作家のアランを演じたアレックス・ジェニングスの自然な演技も素晴らしかったです。

 いい意味で『イギリスっぽい』俳優さんでした。

彼は、自分の母親とミス・シェパードというそれぞれ個性を持った二人の老女と対峙することになり、要するに介護問題と向き合うことになるのですが、非常に自然体でよかったです。

声音とか佇まいとか、そういうことも含めてなのですが、イギリス俳優大好きです(笑)

それは映画全体にも漂っていて、『イギリスの映画を観た』っていう余韻のすごい映画でした。

ハリウッド作品ももちろん大好きですが、それはそれで、イギリスっぽさを求めてしまう時もあるので、そういう気分の時には是非こちらの作品をおすすめしたいです。

 

そして、最後にマギー・スミスの演技ですよね。

これは、もう最終的には「観てほしい」としか言えないのです。

ミス・シェパードの晩年の状態からスタートし、数奇な運命を辿らざるを得なかった彼女の人生がすこーしずつ明かされていきながら、劇作家の目から見た15年間が描かれるこちらの作品ですが、過去がうっすら透けて見える演技というか、周囲の人々が一人の路上生活をする女性を無下にできなかった理由がわかる感じなんですよね。

ラストの数十分の演技は、もう素晴らしいとしか言えなかったです。

 

演技に圧倒されるとはこういう状態のことだなと、ベテラン女優のさすがの演技という薄っぺらい表現では申し訳ないほどの、心に残る演技を見せてもらいました。

号泣するというような作品ではなく、心にしみわたる、人生を考えさせられる映画です。

 

余韻は悪くなかったです。しっとりした雰囲気で終わり、それもイギリス映画っぽくて好きでした。

じわじわあとから感動が来るタイプの作品です。

 

また映画とは違った感動を体験できると思うので、舞台での彼女の演技もぜひ一度観てみたかったです。

 

それでは、また。

 

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