たま欄

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【本】辻村深月『朝が来る』胸に迫る泣けるラスト。家族とは一体なんなのか。

何気なく本屋で平積みされているのを見かけて、内容が気になって読んでみたのですが、読みやすい文章とグイグイ引き込まれる内容で、読み始めたが最後、ページをめくる手が止まらなく、最後がどうなるのか知りたくて普段はかなり読むのが遅いのですが、通勤時に二日で一気に読んでしまいました。

ラスト数ページは今までの出来事と現実がリアルに迫り、感情が溢れ涙なしでは読めませんでした。

 

Amazonの本の紹介では、【出産を巡る女性の実状を描く社会派ミステリー】と書いてありました。

実際読んでみてもその通りで、社会問題も絡めつつミステリー要素も含まれている素晴らしい構成の作品だと思いました。

全ての人にこういうことがあると知ってほしい内容ではありますが、特にお子さんのいる方には一読してほしい一冊です。

 

既にドラマ化もされているようですがドラマの内容を見たら、だいぶ原作に脚色が加えられているあらすじでした。

2020年に映画化も決まっているというのは、読み終えてから知りましたが、そちらはどうなるんだろう。

文庫版の解説を書いている河瀬直美さんという映画監督がメガホンをとるそうです。

まだ、キャストも発表されていないし、公開日も決まっていないのですが、映画の宣伝が始まると原作本を読む人が増えると思うのでそうなると嬉しいです。

 

朝が来る (文春文庫)

朝が来る (文春文庫)

 

 

 

 

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~あらすじ~

 

栗原佐都子はタワーマンションに6歳の息子と夫と暮らす40代の専業主婦。

愛する息子と夫と満ち足りた日々を送っていたが、ある日息子の幼稚園から「ジャングルジムからお友達を突き落とした」という連絡が入る。

佐都子の息子の朝斗は、6年前に養子縁組仲介業者より望まない妊娠で子を手放すことになった母親から引き取った養子だった。

幼稚園でのトラブルに動揺する佐都子だったが、そのトラブルはその後意外な方向に進んでいった。

そして、栗原家にはたびたび無言電話がかかってくるようになっていた。

ある時、その無言電話の主は、「わたし、片倉ひかりです。子どもを返してほしい」と言葉を発した。

”片倉ひかり”とは、6年前に朝斗を産んだ生みの母親の名前だった。

平穏で幸せな日々に訪れた突然の出来事に翻弄される栗原家。

夫の清和とともに、”片倉ひかり”を名乗る女に会った佐都子だったが、夫は、「あなたは、片倉ひかりさんではない、あなたは誰ですか」と目の前に現れた女性に告げる。

 


 

この作品は2人の母親、佐都子とひかり目線の語りの他、合間に2人の息子である朝斗の目線が織り込まれます。

序盤は、養子を迎えた主人公・佐都子の現在の生活、そして佐都子が夫と結婚するに至ったなれ初めから養子を得るまでの過程が描かれ、その後、朝斗の生みの母である片倉ひかりが朝斗を生むことになった理由と、子どもを手放してからの人生が語られます。

 

この小説には、何人もの母親が登場します。

 

主人公の佐都子は養子の朝斗を育てる育ての母、そして朝斗を産んだ生みの母の片倉ひかり、佐都子の実母、佐都子の夫である清和の実母であり佐都子の義母片倉ひかりの母、佐都子のママ友たち、そして望まない妊娠をした女性たちや養子を引き取って育てている佐都子以外の育ての母たちなどです。

今もなお日本では血のつながりという鎖が重視され、養子縁組制度はアメリカなどより進んでおらず、世の中もまだまだ不寛容だし、自分の親も血の繋がった孫を望んでいる人が多い現状だと思います。

 

その鎖を全く逆の意味で断ち切ろうと奔走する2人の女性を本作では描いています。

自分と血のつながる子供との鎖を切る母と、血のつながりの鎖を切られた子どもに愛情を注ぐ母です。

しかし、生物学的に女が母になるためには、女を母に変える男の存在が必須です。

望まない妊娠の陰には必ず男性がいる。

男の子にも、女の子にも、日本では遅れている望まない妊娠を避ける教育を一刻も早く真っ向からしなければいけないと本気で思いました。

 

万が一望まない妊娠をしてしまった時に、させてしまった時にすぐ大人に打ち明けられるような環境を整えておくことやその後の対策も非常に大事で、この作品で子どもを手放すことになった片倉ひかりは子どもだったうえ、生きる力を誰も大人が教えていなかったことで、不幸に不幸を重ねる結果になってしまいました。

彼女にもっと、知恵と教養があれば乗り切れていたこともあったかと思います。

 

養子縁組制度についてはわたしは賛成です。

色々と問題はあると思いますが、もっと日本でも広まればいいと思います。

そういう家庭が増えれば周りも気にしなくなりますし、被虐待児が減るのであればもっといい。

あと、自分自身が「望まない妊娠の子」であり、人に詳しく話すことが憚れるぐらいの劣悪な環境や両親のもとで育っていることは理由の大部分です。

親の責任を果たさなかった割に『親であること』を振りかざす親というとわかりやすいかと思います。

みんな言わないだけで、わたしレベルの家庭環境で育った人はたぶん日本にたくさんいるとは思いますが、”普通”の家で、”普通”に育てられた人にはわからないであろう辛いことが山ほどあるし、一生引きずる傷であることは確か。

経済格差がどんどん広まっている現在の日本。

この先景気がよくなるとは到底思えず、少子化で子どもが少ないにも関わらず、劣悪な環境で育つぐらいなら、海外セレブみたいにお金持ちがどんどん子どもを引き取って育てればいい。

血がつながっているからといって、相性が合うとも限らないし、理解しあえるわけでもない。

家族に感謝できる、家族と仲がいいっていう人は本当に幸せです。

お互い尊重しあえて、努力できている家族なんだと思います。羨ましいです。

そういうわたしがこの作品を読むのは、非常に辛いも部分もありましたが、この作品のラストはとても意外で、それでいて希望があって、人との繋がりの大切さを改めて感じさせてくれるものでした。

 

来年公開の映画では、是非このラストシーンを変にいじらずに丁寧に描いてほしいと思います。

 

 

※ちなみに河瀬直美氏の解説がオンラインにありました。こちらを読んでから小説を読んでも大丈夫だと思いますが、多少のネタバレはあります。

books.bunshun.jp

 

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