ホームドラマがすごく好きなんです。
わたし自身【家族がなんたるか】なんて知る由もないです。
そもそもそ語れる素地もない境遇で育っていますが、それでもホームドラマに描かれる人間群像劇はとても好きですし、愛しいと思います。
ちなみに余談になりますが、私は道産子でして北海道ホームドラマの代表格『北の国から』も、だいぶ大人になってから観ました。
道産子としては、ツッコミどころのまぁまぁあるドラマではありましたが、北海道感あふれる景観のリアルさというのは随所に表現されており、じんわりほんわか系だけではなく、家族であるがゆえの厳しさが描かれるホームドラマも好きです。
『俺の話は長い』は、『北の国から』とは違い、じんわりコメディホームドラマでした。
海外ドラマを観るのにhuluを再契約した関係で、なんの事前情報もなく観始めたんですが、ここ最近の邦ドラでは群を抜いて気に入ったドラマになりました。
本当はもっと人間をリアルに描こうと思えば闇っぽい展開になるところをそういう部分は排除。
人生、家族、仕事を描いてはいますが、複雑さは敢えて排除してある感じ。
闇満載ストーリーも好きなんですが、こういうのも大好物です。
脚本ももちろん素晴らしいし、キャストたちの演技も見応えがあり、20話もあったのに捨て回がなかったし、何度も泣かされた。
毎回、一つの食べ物をテーマに色々な形での食が繰り広げられたのも、よかったです。
美味しそうで、元気が出た。
海外ドラマではよく1話25分程度の短いドラマがあって、隙間時間に観るのにちょうどよく、割と好んで観ています。
1時間の枠のドラマではストーリー的に間延びしているものもあって、途中で飽きてきちゃったりするのですが、こちらのドラマは1枠に二本立ての二話で放送していたようで、1話25分以下で一旦話が終わる。
このスタイルが、じっくり腰を据えて観なくてすむという、バタバタした日常の中で非常に馴染んで、ちょっとしたいい気分転換になりました。
日本のドラマも、地上波の放送を終えたあとの配信を見据えたドラマ作りになったんだなと思いました。
もっとこういうスタイルのドラマが増えればいいのに。
それでは続きまして、ドラマに登場するメイン家族を主観を交えてご紹介。
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『俺の話は長い』は、ニートのミツルが母フサエと住む喫茶店を営む家に、ミツルの姉のアヤコが、中学3年製の娘ハルミと夫コウジを伴い、家をリフォームする間の3か月間暮らすことになり、ミツル、フサエ、アヤコ、コウジ、ハルミの5人家族と、その家族を取り巻く街の人々の物語です。
主人公:岸辺 満(生田斗真)
大学を中退し、世界を放浪したのち意識高い系のコーヒー店をオープンするも、1年たたずに廃業。それから6年間無職のアラサーニート。
屁理屈と揚げ足取りで人を遣り込めるのを得意としているが、その内容は矛盾に満ちている。
実家は、商店街で何十年も経営を続けてきた街の喫茶店『ポラリス』。
コーヒー店を経営していたにも関わらず、亡き父親との確執があったためか店の仕事は一切手伝わずに、悶々としている。
食に異様なこだわりを見せ、母の作った料理に文句ばかり言っている。
頼まれごとには取り合えず文句を言うが、フットワークが軽く基本的には押されると断れない性格。
姪のハルミを可愛がっている。
ハルミにも好かれているが叔父と姪というよりは兄と妹のような関係。
姉のアヤコとは、顔を合わせれば口論ばかりしており、母に諫められているが仲が悪いわけではない。
岸辺 房枝(原田美枝子)
夫亡き後の商店街の喫茶店『ポラリス』を一人で切り盛りしている。
屈託のない笑顔で、街の人からも好かれている天真爛漫な『ポラリス』のママ。
ニートのミツルを心配してはいるが、実際問題あまり深くは考えていない。
基本的に、子どもたちの生き方に口は出さない。
愛情がないわけではなく、そういう性格。
無邪気な笑顔で、確信の突いた毒舌を繰り出し、家族をドキッとさせている。
娘と息子も口が減らないタイプだが、そんな母に逆らえないところがある。
美人でピュアな未亡人を、街の住人たちが試行錯誤してハートを掴もうとするも魔性ぶりをいかんなく発揮。
秋葉 綾子(小池栄子)
中学生の娘、春海との関係に若干悩んでいるキャリアウーマンで部下たちからの信頼も厚い。
思春期で反抗期である春海と自分の関係、そして春海と光司の関係に悩んでいる。
春海は、実父ではない光司に冷たい態度をとるが、仲をうまく取り持てない。
幼少期春海に苦労させている罪悪感があるため、成長した娘に強く言えないところがある。
満が6年間ニートをしていることを不満に思っており、実家に滞在中、なんとか就職させたいと思っている。
竹を割った性格のような見た目と物腰だが、実は繊細なところもあり、春海と光司には甘いところがあるものの、理解されにくい。
秋葉 光司(安田顕)
学校に文房具を卸している会社に勤めるサラリーマン。
元メジャーデビューしていたバンド『ズタボロ』のベースを担当していた。
腰が低く、豪傑な妻の綾子と、自分を嫌っている綾子の連れ子である春海に常に怯えている。
家庭での立場は弱いものの家族を非常に大切にしていて、春海のことも本人なりに愛情深く育てている。
ニートの満とは良好な関係を築いており、街のバー【クラッチ】に一緒に飲みに行ったり相談事をしたりと、綾子の実家での暮らしに馴染んでいる。
クラッチには、昔の光司のバンドを知る店員さんが居る。
基本的には今の生活に不満は抱いていないが、音楽への思いをなんとなく断ち切れない。
秋葉 春海(清原果耶)
同級生との恋、自分のことを理解していないように思える母親、実父ではない光司などにイライラしているが、二人のことを嫌いなわけではなく、甘えているだけの悩める中学三年生。
祖母である房枝と、叔父の満のことは割と好意的に思っている。
ミツルと同じ、食に異様にこだわる遺伝子を持っている。
毛蟹と肉が好きという舌が肥えた子供。
以上、身近に居そうで居て、実はあんまりいないんじゃないか?と思うようなタイプの魅力的なこの5人家族を中心とした物語です。
最後にドラマの感想を、若干のネタバレアリでお送りしたいと思います。
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色々心に響く言葉があったんですが『ポラリス』に30年通っている牧本さんが、ポラリス閉店の危機に直面し、ママへの淡い(?)恋心よりも、自分の日常の居場所に強い思いを寄せていて、
「俺は、美味しいコーヒーが飲みたいんじゃない! いつものコーヒーが飲みたいんだっ!!」
って主張するシーンがあるんですね。
たくさん他にも感動的なシーンがあったはずなのに、なぜかこのセリフに心を掴まれたというか(こういうことってあるよね)ってすごく共感してしまって。
今、日本が新型ウィルスで殺伐とし、経済が冷え込んでいて、お気に入りのお店がなくなってしまうかもしれないという危機を肌で感じているからかもしれないし、わたし自身そういう【居場所】を大切に思っているからかもしれないです。
あと、単純に年を取ってきてるというのもある。
若いときからもともとそういう気質はあったけど、変化することがものすごくめんどくさいです。
この【お店】と【常連客】についての話は、このドラマでは何度かエピソードとして盛り込まれていて、それも通常は”客側から見たお店”ってなりがちなところを”お店側から見たお客”が描かれているところが興味深いなと思っていました。
比較的新規のお客さんに対して、フサエが「ただの客!」と天真爛漫に言い放ったところに、ミツルが「言い方気を付けてー」と突っ込むシーンのあと、30年来の常連の牧本さんを、フサエは「大事なお客さん」と表現したり、クラッチのバーテンダーのカイセイくんが、店に来なくなったミツルのためにわざわざ『ポラリス』に来て「また前のように来てください」 って言いに来たり。
わたしは接客業じゃないのでお店側の気持ちはわからなくて、主に行く側だけど、お金の問題だけではなく”お店に必要なお客さん”っているのかもなーって思いました。
お店側からは言えるはずもないけど、足が遠のいているお客さんに「なんで来なくなったんですか!?」って呼び戻したい人がいるのかもしれないですね。
このドラマの本質的なところはもしかしたら、それぞれの居心地のいい居場所を模索するというところだったのかもしれないです。
ニートのミツルも、ステップファミリーを築いていたアヤコ、コウジ、ハルミの3人も、夫亡きあとの淋しさを消化しきれないフサエも。
ミツルの屁理屈には、本気で腹が立つことも多々ありましたが最後まで楽しいドラマでした。
きちんとみんなそれぞれが、第1話からラストまでの間になんだかんだ前に進んでいるのもすがすがしい気持ちになって綺麗に終わった。
でも、前に進まなくても別にそれはそれでよかったかな。
それぞれがどんな未来を選んだとしても、家族がなんだかんだ支えるんだろうなという絆を感じさせてくれて安心感がありました。
お気に入りの回はニート兄弟が合唱する回でした。
アヤコの財布から小銭抜く歌は死ぬほど笑った(笑)
生田斗真くんが、演技じゃなくたぶん本気で笑っていて、つられて爆笑し免疫力が上がりました。
最後に泣いたシーンベスト3
第3位:大好きな毛蟹より、ハルミの手作り雑炊を喜ぶコウジ
第2位:フサエの撮影したミツルとコウジとハルミが歌う動画を、自分をdisる歌であるにもかかわらず涙ぐみながらその動画を見て「もう一回見ていい?」と聞くアヤコ。
第1位:クラッチからコウジのベースを引き取り一人商店街を歩くアヤコ。
と、アヤコがツートップを独占する結果となりました!
今は、また初めから2週目観たいぐらいの気持ちです。
続編はあったら嬉しいけど、これで終わりでもいいかなー。
というわけで、それでは、また。