twitterのフォロワーさんの間で傑作との呼び声が高く、気になって観始めたら面白すぎて一気見。
これは話題になるよー。
久々にすごい集中して真剣に観ちゃった。
こういうことがあるからドラマウォッチはやめられない。
という興奮もさめやらない、FXの『一流シェフのファミリーレストラン』(The Bear)。
FXはアメリカの有料テレビチャンネルでディズニー系列のテレビ局ということで、ディズニープラスで配信になった本作ですが。
どうしても一言いいたい。
邦題ーーーーー!!!(叫)
違うじゃん。全然イメージと違うじゃん。タイトルと中身が。
確かにわたしが勝手にイメージしていただけですし、厳密にいえば最後まで観たとしても確かに『一流シェフのファミリーレストラン』かもしれない。
嘘はついてないと思うの。
だったらお前が邦題つけてみろ的な? 話にもなると思うんですよ。
でもさ、なんていうかそれはこっちの今までの映画やエンタメ業界にどっぷり漬かり過ぎたせいもあるかもしれないけれど、個人的なタイトルからイメージするジャンルはこれですよ。
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
※過去記事
あとは、
とか、
の完全に、ほっこり系ムービーかもしくはコメディー寄りのドタバタ劇的なイメージでした。
始まって数秒での(え、思ってたのと違う…)という衝撃と、画面への引き込み具合。
ギャップ狙いだとしたら逆に邦題つけた人すごいと思った。
でも、twitterで評判がよいことを知らなければほかに観るものたくさんあるし完全にスルーしてたと思うし、なぜ『一流シェフのファミリーレストラン』という邦題にしたのか?という余計な邪念を頭の片隅に持ちつつ最初から最後まで見てしまったので、やはりタイトルというのは非常に大事だと思う。
今までも、珍邦題をつけられた作品は数々あると思いますが、せめて作品のイメージは崩さないような邦題の付け方を望みます。
個人的には『The Bear』でよかったんじゃないかなと思うんです。
ストーリーとしてはそこまでひねりのあるものでもなく、料理の天才が潰れそうな町のB級グルメを出す町の飲食店を再建しようと奮闘する物語なんです。
そのお店が身内のもので、古くから働く人たちが新人を歓迎してなくてっていうよくある話ではあるの。
個性のある古くからの店員さんや資金繰りに苦労しながら、周りの人たちとぶつかり合い、時には支え合いながらも一歩一歩前に物事を進めていくという。
あらすじだけ聞くとやっぱりほっこりストーリーで。
全くほっこりしないわけでもないのですが、見どころはほっこりにはない。
いや、ほっこりしてくれてもいいんだけど、こういうストーリーのほっこり作品は探せばほかにもいくらでもある感じ。
この作品の見どころは、
スピード感、カメラワーク、脚本、役者同士の掛け合い。
これに尽きる作品でした。
画面から迸るパワーと勢いで目が離せなくなるという作品です。
個々のキャラクターの説明はほとんどないため、本当に勢いで見ていく感じ。
その勢いに引っ張られる感じが心地よくて舞台を間近で見ているような高揚感。
世界観に入り込む楽しさを久々に味わいましたし、新しさにドキドキしました。
一体感、一体感。
好みはあるかと思いますが、1話も短めで見やすいため未見の方はぜひチャレンジしてみてください。
以下はネタバレ感想です。
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役者さんたちのハマり度と演技の上手さよーーーー!!!
ほぼ同じ場所で、喋りと動きだけで流れるように進んでいく本作。
セリフをちょっとでも噛んだら、セリフを言うタイミングが一秒遅れたら全て台無しになりそうな中の緊張感漂う現場で、よくぞやりとげたな、みんな!という、謎の上から目線が発動されるぐらいのスタンディングオベーション的な気持ちになりましたね。
不要なキャストが1人もいないとこうも満足感が高いかね?
でもさー、本当にすごくなかった?
役者としてあの作品に出れたら本望なのではないかという演技の妙技だったと思う。
役者さんが見たらたぶんすごくうらやましいと思う作品だったと思うの。
やってみたいと全員が思うような作品だったんじゃないかって。
カーミー、リッチー、シセロ、シドニーの四名が特にセリフが多かったと思うけど、本気の口喧嘩とじゃれ合いのギリギリのところを責めるのは大変だったと思う。
しかもあの人たちは普段はあのレストランで働いている人じゃないっていうのがまたすごいんだよね。
動きとしゃべりをピタッと融合させるのはまさに職人芸だった。
どんだけ練習とリハーサルしたんだろうって思ってました。
あとはカメラワークね。
演出すげーーーーって大興奮しましたよ。
カメラワークでの見せ方が独特な監督さんはたまにいて『ブレイキング・バッド』&『ベター・コール・ソウル』もアート的な見せ方が多いんだけど、病的な緻密さを感じてこっちも緊張して一瞬たりとも気を抜けない。
あと、特筆したいのはここのお店はマイケルの人柄とコミュニケーション能力でもってたお店で働いている人たちもマイケルが大好きだったからカーミーの実力は認めてはいるけど、表面上認めるとマイケルもマイケルを大好きだった自分も否定することになる感じのもやもやとか、新しい人が来て正論ぶちまけて改革していく感じに抵抗したい感じの描写がうまかった。
わたしは会社にいると不本意ながらシドニーみたいな小生意気なタイプに思われがちなので、野菜担当の女性みたいな人に目を付けられがちで、あのやりとりはよくわかるし、とてもリアルだと思う。でも野菜担当の女性が自分の仕事に価値を見出したシーン(マッシュポテトのくだり)は、女優さんの演技がうますぎて泣きそうになってしまった。
パティシエとしての仕事の楽しさに目覚める若い男性もよかった。
脚本も演出もそれにこたえる役者さんも完璧だった。
あと、今まで海外エンタメをずっと見ていたのに自分が日本人だからかそういう価値観はあんまりなかったし、今まで気に留めてなかったけどそういう風に考えてしまうのもわからなくはないと思うシーンがあった。
シカゴという都市で労働者階級にむけた飲食店に勤めている労働者階級の人たちのプライドを描くシーンだった。
ドラマの前半でカーミーに、なんとなくでやっているそれぞれの仕事を役割分担するように言われたシドニーがそれを従業員のみんなに伝えるシーンで役割分担として伝えようとしていたシドニーが従業員の黒人の男性に「階級なのか」と質問を投げかけられる。
わたしは当事者じゃないから想像しかできなかったけど、想像することに意味があると思うからどう思ったか書く。
シドニーは若いけど黒人だし、でも若いから先ほどのシニア黒人男性ほどの差別は受けてない。差別はもちろん受けてはいるけれど、それはシニア黒人男性の若い頃とは全く違っているとは思う。どっちがどうとかではなくどっちもつらいけどやっぱりシニアの人は敏感に感じ取ってしまう部分があると思う。
差別のない店はお給料はそこまで高くなく過酷なところもあったかもしれないけれど、そういうしがらみのない職場として居心地はよかったのに、そういう価値観を押し付けられる恐怖みたいなものがあの一瞬のシーンで受け取れたので、すごく切なく思った。
シドニーはもちろんアメリカ人で黒人女性なので、そのことを察知して「階級ではない」と言い直した。
そして、あのシーンでレストランの存在意義というかマイケルの人柄とか店主としての力量とかそういうのが伝わってきて来るシーンでもあった。
親戚であるリッチーとシセロの二人もいい味を出していました。
わかりやすいお涙頂戴的なストーリーではないのに、家族ってこういう感じだよねっていうのを描いてくれたと思う。
さらに観ているうちに「こういう風に働けたら幸せだろうな」って思ってくるから不思議だった。
気の置けない仲間と言いたい放題言い合って、次の朝にはまた普通に仕事に行く。
ストレスがたまっているようで、たまってない感じ。
暴言言い合ったあとには、同じテーブルで笑いあってごはんを食べる。
何があっても居場所がある幸せ、みたいなこと。
人の弱さと逞しさが描かれていて非常に印象深い作品でした。
どうしようもない人生を、それでも生きていく。
押しつけがましくなく、励まされた感じがします。
最終話の落とし方も素晴らしくシーズン2をぜひ期待したいです。
本当にいいものを見せてもらいました。
というわけで、それでは、また。
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