たま欄

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『マリッジ・ストーリー』愛があっても二人で居られない。脚本、演技ともに圧巻。ラストに涙。

2020年度アカデミー賞作品賞、主演男優賞(アダム・ドライバー)、主演女優賞(スカーレット・ヨハンソン)、助演女優賞ローラ・ダーン)、脚本賞ノア・バームバックがノミネートされている『マリッジ・ストーリー』

Netflixオリジナル作品としてはアイリッシュマン』と並び、受賞に期待がかかっています。

配信されてからSNSでの評判がよかったのもあり、ずっと観たい、観たいと思っていたのですが、なかなかまとまった時間が取れず後手後手に回っていました。

今回意を決して寝る時間を削って観ましたが、余韻を引きずる傑作でさすがノミネート受賞作。

愛し合っているもの同士の”どうしようもない噛み合わなさ”が映画でここまでリアルに如実に描かれるのは、ちょっとした感動でもあった。

離婚(Divorce)の物語なのに、タイトルは『Marriage Story』というところにも拘りを感じました。

 

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ストーリーは、駆け出しの映画女優と若き才能ある弱小劇団監督が出会い結婚して、子供にも恵まれ劇団も順調に成長して10年。

最初はスムーズに回転していた歯車が時間とともにさび付き、騙しだまし歯車を回転させていくも、ひずみに耐えられなくなり修理を試みる・・というような内容です。

 

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このポスターは本編を見た後に見ると、すごい!よくできてる!!と感心します(笑)

そして、アカデミー賞主演女優賞・男優賞ともにノミネートも納得の二人の細かな演技。

わたしは女なので、特にスカヨハ演じるニコール側に気持ちが寄ってしまいましたが、アダム・ドライバー演じるチャーリーの気持ちもわからなくはなかった。

二人の掛け合いに気持ちが揺れ動いたし、映画最大の見せ場であっただろう二人がお互いの気持ちを本気でぶつけあうシーンと、ラストシーンでは泣きました。

わたしにとっては【ブラック・ウィドウ】であった、スカーレット・ヨハンソンの代表作に間違いなくなる作品ではないかなと。

感情を言葉として吐き出すのが苦手なニコールの感情を、繊細に演じきったと思います。

あと、やっぱりスカヨハの声が好きだ。

 

ただし、作品としてはこの二人の矛盾をはらんだ葛藤にイライラする人もたくさんいると思うし、特に派手な出来事は起こらない、本当に地味な日常を描いた作品なので、響かない人には響かないかもなぁとは思います。

Netflixオリジナルというハンデもあるし、作品賞の受賞は難しいかもしれません。

脚本賞と、ジョジョ・ラビットでもスカヨハは助演にノミネートされているので、主演女優賞あたりはいけるかもと踏んでいます。

これでも、去年、未見のまま『グリーンブック』の作品賞受賞を当てています(笑)

 

というわけで、 しごく個人的なエモーショナルな感想になるとは思いますが、下記にネタバレありの感想を書いていきたいと思います。

 

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非常に身につまされた作品だった。

パートナーとの【愛ゆえに回っている当たり前の生活】。

例えば、この映画だと妻のほうが、夫の仕事を優先し居住地や仕事を妥協しているわけだけど、妥協している案件>相手への愛となってしまった時の関係性の崩壊はもう止められないなと思いました。

 

家事や育児の負担、子育ての価値観、経済観念、お互いの実家との付き合い方、休日の過ごし方、衛生観念、食べ物の志向、部屋のインテリア、快適温度、家具家電のランク、細かいことで言えば、洗剤やシャンプーの銘柄、トイレットペーパーの好み、しょうゆやマヨネーズ、牛乳のメーカーなどなど、それはもう多岐にわたると思うのですが、そういうのを話し合いですり合わせて中間に寄せたり、パートナーに合わせても問題ない部分はそちらに合わせたり、時には愛ゆえにものすごく妥協したりしながら生活していくのが一般的だと思んです。

ただし、妥協している側は「こちらはあなたを愛しているから我慢していますよ」って具体的に伝えることはあまりなく、決断は本人の自由意思だったりすることも多いので、相手がその利益の享受を当然だと思っていたからさらに事態を悪化させることになった典型的な例が本作品だった。

「あなたのことを愛しているから、マヨネーズはAJINOMOT〇派だけど、キ〇ーピーに変えます」とかイチイチ言わない。

マヨネーズぐらいなら二種類買えばいいけど、そういう単純な問題じゃないこともたくさんある。

 

チャーリーにとっては、妻が自分の仕事を応援してくれていることは、至極当たり前のことだったし、子の父親としても家庭の夫としても自分は優れていると思っていたから、妻からの離婚の申し出は、浮気という負い目があったとしても意外な展開だったんだろうなと。

アメリカにおいても、女の立場ってまだまだなんだなぁ・・と思いました。

ニコールについた弁護士も「父は完璧でなくてもいいけど、母は完璧を求められる」

と力説していました。

ただし、ニコールもたびたびチャーリーにサインは出していたのに、チャーリーは気づかないフリをしていて、めんどくさいから深く考えなかったし、自分の夢に夢中で、自分が成功することは結果的に妻の成功だとも思ってたから、永遠に自分に妻がついてくることに関して疑いは持たなかった。

もちろん妻の愛も不変だと自信があった。

 

そして、ここが難しいところでニコールの愛も、ゼロになったわけではないし、夫と添い遂げたい気持ちが全くなくなっているわけでもないっていうのが人間の感情のめんどくさいところだなとは思う。

正解が決まってない、正解はない!っていう状態の繰り返しが人生だったりする。

そういうモヤモヤの最中に、相手への200%の愛が、徐々に150%になっていき、100%でなんとかギリギリ持ちこたえていたところを浮気というきっかけで、タガが外れて、そのあとは30%の日があったり、80%に復活したりする・・っていう感情の揺れを見事なまでに脚本で表現されていたと思う。

髪の毛がボサボサになっているチャーリーのことが気になったりするんだよ(涙)

 

ニコールももっとはっきり言っていれば、ここまでこじれることはなかったのに、やっぱりチャーリーをどうしても愛しているという砦があったんだよな、ってものすごく切なかったです。

チャーリー側も、ニコールへの愛ゆえに我慢していたことが山ほどあって、自由気ままし放題だったわけではなく、ニコールだけが我慢していたわけではないという持ちつ持たれつの部分もあったわけで。

欧米の人たちって日本人よりパートナー同士がはっきり言い合って、お互いの気持ちをぶつけ合うイメージがあったけど、海外ドラマや映画を観ていると、意外とハッキリ言わないで話をややこしくこじらせていることが多いです。

今回も、ここまで気持ちがこじれる前に話し合いしていれば・・と思いもしたけど、話しても無理って思っちゃったんだろうな、今までの経験で。

そして、すごく矛盾してるんだけど、完全に自分に合わせてほしいわけでもなかったというか。

別居婚という道もあったと思うんだけど、ああいう精神状態になってたら無理だよね、もう。

 

とにかく、二人ともの気持ちがよくわかって辛かったです。

 

二人には、息子が居て息子の親権を争う形で弁護士を立てて余計に精神的に殴り合う形になってしまったけど、息子の存在が二人を父と母という絆で結び付けてるから、離婚はしたけど、二人の『マリッジストーリー』は完全に終わりなわけではなくて、これからも続いていくし、でも、復縁・・はさすがにないかな。

ラストシーンの靴ひもを結ぶシーンでは、涙腺が崩壊しました。

(ヘンリーを抱っこしてるから転んだら危ない)とかそういうことではなくて、あれは、反射的なものだったんじゃないかとわたしは思いました。

 

ごちゃごちゃ言いましたが、スカヨハの受賞期すごく待してます!

演技、すごくよかったです。

 

というわけで、それではまた。

 

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