訃報に言葉を失った。
こんなに立て続けに若い俳優さんの死について記事を書くことになるとは、夢にも思わず、日々を淡々と送っていた。
三浦春馬君の件も、あれから頭の片隅にずっと残っている。
マーベルファンとして、何か書こう、何か書きたい、という思いだけで画面を開いたが、なかなか筆が進まないし、思考もまとまらない。
『ブラックパンサー』をわたしが観たのは、2年前の3月で、MCU沼にどっぷり浸かっている時だった。
元々『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』への繋がりのために絶対必要な映画だったから観に行ったまでで、早く『アベンジャーズ』を観たかったし、正直そこまで乗り気じゃなかったのに『ブラックパンサー』という映画の世界観とパワー、そしてワカンダという美しい国にすっかり魅了されてしまったのだった。
今考えると当時は、MCUに夢中で今よりずっとキラキラした日々だったように思える。
多分コロナがあるかないかの違いだけで、今と変わらない日常で、嫌なことも今と同じで毎日のようにあったと思うけれど、思い出せない。
IMAXで観たワカンダの美しい景色は鮮明な記憶。
今は『アベンジャーズ/エンドゲーム』でのMCUの一つの区切りにより、正直なところ当時ほどの情熱をMCUには抱けていない。
ファンをやめはしない。
けれど、わたしにとっても一区切りだった。
わたしが何かに盲目的に情熱を傾けられる期間はだいたい2年と相場が決まっている。
ちょうどいい頃合いだったのかもしれない。
そんな中『ブラックパンサー2』での国王陛下とその恋人との色鮮やかで美しく、笑顔溢れる結婚式を観られるであろうと信じて疑っていなかったわたしにとって、今回のことはさらなる打撃だった。
次の作品は結婚式どころか、お葬式で始まり、オープニングから涙する作品になってしまう。
そもそも、2は制作されるのだろうか。
死はいつも突然すぎる。
新生ワカンダを率いる、心優しくちょっと頼りない物静かな陛下、ティ・チャラを演じるチャドウィック・ボーズマンの新しい姿を観ることは生涯叶わなくなった。
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『ブラックパンサー』はアメコミ系のヒーロー映画として初めてアカデミー賞の作品賞にノミネートされた。
オスカー好みの捻られた物語ではなく、大衆的なストーリーなので受賞は逃すと思ってはいたが、それでも快挙だったし、マーベルファンの一人として純粋に嬉しかった。
植民地化されたことがなく、もちろん奴隷になったこともない、ほぼ鎖国状態で自給自足で暮らしているアフリカの独立した国という架空の美しい国ワカンダ、そして、世界を救うヒーロー軍団という存在は、どれだけの人々を勇気づけたのか。
主演のチャドウィックは、制作側よりイギリス訛りの英語を話す設定を告げられたが、植民地のイメージが出てしまうと断り、アフリカ訛りの英語を習得したという。
病と、手術や化学療法の治療を隠したままでの撮影は、本人も相当の精神力が必要だったことだろうと思う。
ご家族も不安だっただろうし、本当は辞めてもらいたかったに違いない。
ここまで闘病の話が洩れなかったのは、彼が信頼できる人物に囲まれていた証拠であり、それに値する人物だったということは容易に想像できる。
それだけ、彼が作品に真摯に向き合ってきたということだし、周りもその思いに応えた。
わたしもその一端を感じ取れていたらいいと思う。
世間的に影響力のある人が亡くなった話を聞くと、なんて世界は残酷なんだろうと思う。
もらってばかりで何も返していないのに。
命の価値に差はないというけれど、わたしなんかはこうして生きているのに。
申し訳なさと悔しさがにじむ。
今はせめて、病の辛さから解放されて安らかに眠っていることを願うばかりです。
チャドウィック・ボーズマンのご冥福を心からお祈りします。
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※ブラックパンサーは素晴らしい作品です。