こちらの作品を観る動機は、観る作品をボーっと選んでいたとき、表紙にマーク・ラファロ(二代目ハルクのブルース・バナー)を見つけたからでした。
あらすじを観ると実話モチーフの社会派作品でしたが、天気も悪いし静か目な作品を観たかったので、ちょうどいいと思って選びました。
アメリカ地方都市のボストンの新聞社が発行している日刊紙、『ボストン・グローブ』の4名の記者のチームが、昔から疑いのあった教会の神父による子どもへの性的虐待事件の真相を、買収により配属されてきた新しい編集長の命により追うことになるというお話です。
実話モチーフだし、テーマも重いし、アメリカでの宗教的なしがらみや教会の絶対的な立場などが日本人であるわたしにはわかりにくいし、色んな職業の人が矢継ぎ早にたくさん出てくるしで最初はかなり頭がこんがらがりました。
でも、わたしがマーベルファンなことがこの映画にしっかり向き合うことにうまく作用して、結果胸に響く印象的な作品となりました。
なにしろ、わたしにとってキャストが馴染み深いことがよかったです。主役(?)のマイクは、ハルクことブルース・バナーの二代目を初代を超える形でしっかり演じるマーク・ラファロで、今よりちょっと若くて、痩せてて正義感の強い暑苦しい記者をしっかり熱演。あと、やっぱり声と目がいい。好き(笑)
マイクの上司でチームのデスクを演じるのは、スパイダーマン:ホームカミングで、悪役のバルチャーをかっこよく演じた名優、マイケル・キートン、マイクの同僚の紅一点サーシャには、ドクター・ストレンジで、ストレンジを支える女医クリスティーンをかわいく演じたレイチェル・マクアダムスでした。
そういったわけで、MCU(マーベルシネマティックユニバース)好きな人は入りやすいと思います。
観た感想としては、実話ものを観たあとよくこういう気持ちになるのですが、フィクションとは違って、勧善懲悪でもなくすっきりは、しません。ずっともやもやします。
教会という絶対的な善であるべき組織の悪を暴こうとする新聞記者にも葛藤があり、迷いがありました。だからと言って、被害者を泣き寝入りさせていいはずがない。
その思いで取材を重ねていきますが、妨害ももちろん入ります。神父たちのひどい悪行とそれを隠ぺいする教会に手を貸し、さらに箝口令に従うたくさんの人々。教会を守ることは、町を守ることとイコールのようでした。
ただし、神や宗教を守るために犠牲を強いるのはどこの神も許してはいないとは思うのですがそこは神ではない人間の考えるエゴなのでしょう。
日本に生まれ育ったうえ、無宗教のわたしにはわかりにくい価値観ではありましたが、教会を守る側にも事情と大義があるようでした。
だとしても、被害者の声はとても痛ましく、このままにしておいていいはずがないという思いを強く感じました。恐らく、映画を作る段階で宗教側にも配慮して制作されたのではないかなと思います。
詳しくは映画を観てほしいと思うのですが、巨大な組織や権威の犠牲になるのはいつも、声を上げられず、たとえ上げたとしてもその声を潰される弱者なんだということが改めて胸に響きました。声を社会に届かせたり戦ったりするには、味方をたくさんつける行動力やお金などの余裕がいる。潰したい側はそれを知っているから、そこにつけ込んで疲弊させて声を潰してしまう。
そして、たとえば、わたしが似たような事例に巻き込まれた時、声を潰される側に自分がいるということもよくわかりました。
本来であれば、そういう人たちを助けるためにマスコミがあるのだと思うし、この作品ではその使命で新聞記者が戦いました。
ただし、今の日本ではそういう事例はあまりなくなりましたね。
インターネットで情報も氾濫してるし、情報もお金でなんとでも操作できる時代です。
多分マスコミの人の中にも、こういう使命感で仕事されてる方も中にはいるのだと思います。ただ、力に潰されて世に出ていないだけで。
なにはともあれ、さすがのアカデミー賞作品賞受賞作で、静かながら力強い作品でした。
ハルク(マーク・ラファロ)に連られて観た一作ではありましたが見応えがあり、観て損はなかった社会派作品でした。
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