2021年GW映画視聴ご報告第2弾は時代劇二本です。
※第1弾
わたし自身は戦国時代のあれやこれやをレベルでいうと、中の上ぐらいの知識があると自分では思っている程度なのと、時代劇には馴染みがある方なので楽しめました。
『引っ越し大名』→『花戦さ』の順番で観たのですが、『引っ越し大名』で時代劇の勘を取り戻し、『花戦さ』でガチ感を楽しんだ感じで観た順番もよかったです。
『引っ越し大名』は軽くみられて綺麗にまとまる時代劇なので、普段時代劇をあまり観ないライト層向け。
『花戦さ』は思っていたよりえげつない内容だったのと、利休と秀吉の確執を知っていた方がより楽しめるので、時代劇好きな人向けです。
こうして並べてみるとジャケットというかポスターに芸がないな・・・。
全然テイストの違う作品なのに、上も下も似たような内容な気がしちゃう。
非常にもったいないなー。
引っ越し大名はともかく、花戦さはこんな感じじゃないんだよね。
もっとアーティスティックな感じの映画なのに。
これじゃパッと見コメディーぽい。
そうはいっても両方見ごたえのある作品ではあったし、キャストも豪華だったのでそれぞれの作品についてご紹介させていただきたいと思います。
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・引っ越し大名
あまりに国替えを命ぜられたため、【引っ越し大名】と名付けられたた実際の大名をモデルに描かれた映画です。
松平という名字でピンとくる方もいらっしゃるかと思うのですが、松平直矩(なおのり)は徳川系の大名です。
ひいおじいちゃんが徳川家康、おじいちゃんが徳川家康と側室の息子である秀康です。
時代は五代将軍徳川綱吉の時代で、綱吉といえば『生類憐みの令』が有名ですが、わたし個人的には15人の中ではわりかしいい将軍だったと思う。
『生類憐みの令』を出すまでは、頑張っていた(と思う)。
わたしは好き。
そして、今回の引っ越しの発端(とされる)晩年の綱吉の側近・栁沢吉保(やなぎさわよしやす)も出てくるので、綱吉政治の後半あたりの物語だと思います。
ある意味まだ血の気が若干多い時代ともいえるかも。
国替えにはいろいろな策略があった(藩の力を弱体化させる、他藩への見せしめなど)と思いますが、当時も現代と全く変わらず幕府は地方行政にお触れを出すだけで、従わなければお家取り潰しの危機。
その時の気分で適当に出されたお触れでもその通りにしなければいけません。
この松平直矩に関してのこの時の国替えの史実に関して言えば、他藩の騒動の巻き込み事故的な要因ではありかわいそうではあったのですが、今回の映画では「夜の誘いを断ったから」というエピソードにされています。
民や部下から慕われる殿ではあったようなのですが、美少年好きとの記録が残っている直矩。
その直矩を演じるのは及川光博。
ミッチーを誘惑し袖にされたのは誰なのかも要注目です(笑)
そして!
実際に振り回されるのは首長である殿ではなくて、下っ端というのもお約束。
藩のために、藩の人たちのために人生をかけて引っ越しに挑む引っ越し係・片桐春之助を星野源が演じていました。
正直ピッタリな配役だったと思う。
個人的には溢れる才能がうらやましくてあまり好きではない彼ですが、演技は完璧だったんじゃないでしょうか。
武士としての所作も美しく、声もいい。
ソツのない感じがまた腹が立ちますね(笑)
才能は認めるけど、好きになったら負けだと思っている。←aikoが好きだから
『のぼうの城』の犬童一心監督なので、ほっこりだけではないシリアスな現実も盛り込まれており、アクションシーンもありました。
当時流行っていたのか、高橋一生がワイルドな豪胆武士を演じていて意外だった。
あんな高橋一生を見られる作品もそうそうないと思う。
そして、ヒロイン役の高畑充希が思いのほか素敵でですねー。
歌うまアピールの激しい女優というイメージしかなかった(ごめん)のですが、綺麗だし着物での所作が美しくてですねー。
『とと姉ちゃん』を途中で挫折したわたしですが、今年の【格付け】で好感度がアップしていたところ、こちらの作品でもわたしの中で評価がうなぎのぼりによくなった女優さんでした。
あ、でもこの作品でもやっぱり歌っていた(笑)
そのほか、脇役も豪華で話もシンプルでわかりやすく、最後もきれいにまとまっていて、非常にいい作品でした。
ご興味のある方はぜひ。
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・花戦さ
初代の池坊専好の物語。
今回初めて知ったんだけど、歌舞伎みたいにお花の家元も名前を襲名するのね。
お茶もお花も縁のない人生なので知らなかったです。
池坊専好は4人居て、四代目専好は昭和の人だったようです。
この【立花の大成】という前田利家邸で行われた巨大生け花イベントをモチーフに時代をさかのぼったフィクション(だと思う)です。
※これから映画を見る人は見ない方がいいページ
わたしを歴史の道に引っ張ったきっかけは、それまで歴史ものに全く興味がなかったのに「『のぼうの城』(小説)は面白いから!」 と勧められ、嫌々小説を読んだたことなのですが、のぼうの城の映画の主演が野村萬斎と聞いて「いやいやいやいや、さすがに原作とタイプが違いすぎるでしょ(笑)」と思った原作ガチ勢にも関わらず、これはこれでアリだなと思ってしまったぐらいの存在感なので、信頼感があります。
狂言風のちょっと大きめな演技も時代劇だと癖になる。
それをもってしての佇まいの美しさ、色気みたいなものもあって不思議な魅力です。
でさー、これも知らなかったんだけど、池坊の坊って本当に【坊】なんだね。
坊主の坊。
池坊は元々、寺。
てわけで、池坊専好は住職なんですよね!
袈裟大好きー!!!
ってわけで、フェチ心をわしづかみにされたわけですが、もちろん作品としてもとても素晴らしくて。
数々の美しい生け花は美術館のよう。
調度品も豪華。
墨絵も素晴らしい。
気軽にお出かけもできないこのご時世に美術館に行ったような、一瞬一瞬時を止める静かな映像。
アート時代劇。
そして、エンドロールで知ったんですけどこちらの作品、原作はあるんですが脚本は森下佳子さんでした。
ドラマでは、時代劇では『JIN-仁-』、最近では『義母と娘のブルース』『天国と地獄』などを担当された方ですが原作があるとはいえ、ここまで秀吉を悪役に振り切った作品初めて見ました(笑)
秀吉のことそんなに嫌いか!?って観ながら思っていたのですが、脚本を見て森下さんの出身地を見たら「え、大阪出身?」ってなり二度びっくりしたわけです。
時代劇って作家さんの推し武将がひいきされていることが多かったりで(あー、この人は家康が嫌いなんだな)って思うことも多かったりします。
というわけで、太閤好きは観ない方がいいと思います。
わたしは秀吉アンチなので(こんな感じのイメージだよね、わかる)って感じでした(笑)
そして、その秀吉に命まで捧げた三成推しです。
秀吉が推しの推しでも秀吉アンチは譲れない。
ちなみにこの作品では吉田栄作が三成だったけど、出番が少なかったためか今までの最低三成更新ならず。
この映画の主人公は池坊ではありますが、実際の話の主軸は利休と秀吉の確執です。
利休はもともと信長の茶道で、その関係もあってか利休にはたくさんの武士の弟子がおり【利休七哲】と後世に呼ばれたメイン武将たちもいました。
元々百姓の出(と言われている)秀吉が本能寺の変のあと信長の後釜になり、信長の茶道だった利休もそのまま秀吉の茶道になったのですが、秀吉の意のままにならなかったんでしょうなー。
利休はおそらく天下人をちやほやしなかったし迎合しなかった。
利休は信長派だったし、本能寺の変のことも疑ってたんじゃない?←個人の感想です。
そもそも利休は武士じゃないし、忠誠心とかないじゃないですか。
どっちかというと芸術家的な位置づけだと個人的には思ってるんですよ。
信長は最高のパトロンだったんじゃないかな。
というわけで、色々とあったみたいなんです。
利休と秀吉の間には。
民の間でもアンチ秀吉が拡がり、人脈があって武士たちも囲っている利休に脅威を抱いていた三成の策略だともいわれていますが、それでも武士じゃない利休にした仕打ちは許さんからな。
というわけで、あまりそういうイメージのなかった利休を佐藤浩市が渋く演じていてよかったです。
わたしが今まで見た中で一番の利休は石坂浩二でしたが、佐藤浩市もアリ!
秀吉役は四代目・市川猿之助(元:亀次郎)でした。
芸達者な役者さんが多く雰囲気を壊す人がおらず世界観が最後まで崩れないのがよかったです。
音楽はジブリでおなじみの久石譲というのも馴染みがあってよかったのかもしれない。
こちらの作品は利休と秀吉の確執があらかじめわかっていて、これはあのころだな、あのころだなって自分で背景を補足できると理解が深まり趣深いので『引っ越し大名』よりも時代物が好きな人向けの作品かなと思いますが、わたしのレビューのざっくりした内容だけでも十分楽しめると思います。
以上、二作品ご紹介させていただきました!
両作品とも久しぶりの邦画でしたが、満足しました。
最後、利休と池坊を観ながらずっと思っていたんだけど、いつからお花とお茶が【淑女の嗜み】みたいになったんだろう。
というわけで、それではまた。
※原作も読んでみようかな。装丁がきれい。