ちょっと忙しくて本をしばらく読んでいなかったので、読みやすい本でリハビリ。
西條奈加著 『千年鬼』です。
読んだ後に、上記文庫の表紙絵を見ると改めて(すごくすごく、いい絵だなぁ)としんみりします。
この作品の著者の西條さんはこのカバーイラストを見た時とても感動しただろうなぁと思うんです。そのぐらい、この絵には作品のよさが詰まっていると思います。
千年鬼は、オムニバス形式で進んでいく時代小説です。
短編が集まっていることと、文章が軽やかで美しく、時代小説にしては非常に読みやすいです。移動中のお供なんかにしても、疲れずに読むことができると思います。
基本は、小さな鬼と人の交流物語です。
小さな鬼はその人が望んだ過去のシーンを夢のように見ることができる『過去見』という術を持っていて、 自分の知らない事実を見ることで、何かしらの気づきがあり人生が変わっていくという内容です。
あっさりと読めてしまうのですが、時代背景も含めて人の暮らしがけっこう過酷なので、シリアスだったり奥深かったりと基本的には切ない感じです。
文章が軽やかなので、重い雰囲気は醸し出してないのですが、テーマはけっこう重いと思います。
さくさく進んでいくと、最後のほうの短編になると今までのお話の種明かし的な作品が出てきてすべてつながるという感じです。カバーイラストのお話が出てきます。
この小さな女の子と、緑の髪の毛の赤鬼のお話につながってくるのですが、この短編の中でもすごく切ないお話で、ちょっとうるっときました。純真って、大人にとっての凶器です(笑)
ブログのタイトルに『純愛小説』と書いてしまったのですが、こういう風に表現してしまうと、最近流行りの実写化映画のような恋愛風味を誤解されるかなと思ってすごく迷いました。でも、わたしのボキャブラリーでは、この女の子と赤鬼の関係を表現するのに、他のうまい表現が見当たらなかったし、そういう恋愛風味とかじゃなくて、本来『純愛』とはこの2人のような関係に使われるべき表現なのではないかとも思いました。
難しいとは思うけど、同じ『愛』をテーマにするなら、こんな作品を実写化にすればいいのに。
子供の時から慣れ親しんだ『日本昔ばなし』もアンデルセンもグリム童話も楽しく夢のある話よりも、時に残酷で切なくて悲しいお話が多かったと思います。
読後感は、子どもの時に観た日本昔ばなしのアニメの暗い方の話を見たあとの気持ちに近いような気もしますが、一方、生きる希望を少しもらったような気持ちにもなりました。余韻がじわじわ来ます。大人の童話は複雑です(笑)
何度も言っていますが、非常に読みやすいので時代小説を普段読まない方や時代小説デビューにもおススメです。
わたしは個人的に気性の激しい武家のお姫様と、忠義を尽くす家臣の物語が好きでした。
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