わたしが書評も書いていたことを知らないリピーター読者の皆さま、こんにちは。
そして、明けましておめでとうございます。
新年1発目の記事は、ドラマや映画ではなく本の感想です。
こんだけ既に記事も無数にあるし、ブログも春で丸4年を迎え、5年目に突入するので、今さら節目とかない感じですが。
ちなみに、2019年10月ぶり以来の本の感想文です。
2020年はドラマも映画もまともに観られてないし、本をがっつり読めるようなメンタルじゃなかったから、漫画以外読んでなかったかもしれない。
記憶がない。
というわけで、昨年末メンタルの回復と共にプロの文章に触れたくなって、本への欲求が高まってきました。
本来は、書くより断然、読む方が好きだし。
しかし、久々過ぎて何を読んだらいいのか全然わからなかったので、変わった装丁の作品を何冊かチョイスしました。
一冊目は、実写化の写真が装丁?
と思って思わず買ってしまったんですけど、単なるブックカバーで、この下にちゃんとした表紙があった。。
下の映画の公式サイトのサムネイルのピンクの写真がそうです。
初めて読む作家さんのジャケ買い。
薄くてさらっと読めそうだったし、一応直木賞も受賞しているし、実写化されているということは、大外れはしないだろうと思って買ってみたのですが、久々の小説としては個人的に大当たりでした。
・短編の連作で読みやすい
・文章も綺麗で、わかりにくくない
・作家さんが同郷でさらに舞台も北海道だったため、言葉や風景や町の匂い、そして登場人物の人柄などのイメージが掴みやすかった
それでも、久々の読書は体力を要し、薄い文庫を何日もかけて読み切る有様だったのですが、リハビリとしては成功したようです。
勢いで今、500ページもあるノンフィクションを読み始めています。
上記ノンフィクションの話は、また後日させていただくとして、今回は『ホテル ローヤル』について。
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釧路湿原を見下ろす高台に建つ『ホテル ローヤル』。
ロイヤルではなく、あくまでローヤル。
北海道って独特の空気感があるんです。
空気が綺麗とかそういうのじゃなくて、建物の屋根の色味とか道路の雰囲気とかそういうのです。
テレビで何も言わず引きで北海道が映ったら、あー、舞台が北海道だなってわかる程度には特徴があると思います。
色々な県の色々な地方に今まで行ってみたけど、似てるようでいてちょっと違う。
そういう北海道の空気感と、ホテルの表現が見事にマッチしていました。
街の外れの道路の山側に突如現れるネオンの看板と、今ではあまり見かけなくなった見るからにラブホテルの外観のその建物、その存在を必要としている、どんな人でもひっそりと受け入れる包容力のようなものを漂わせている。
作品の感想を一言で言うと、なんてリアルなんだろう・・・でした。
桜木紫乃さんの作品を読むのは初めてでしたが、どう表現したらいいんだろう。
特になにもなければ一生、世のなかから注目もされなければ、誰にも助けてもらえない透明人間的な人生を描くのが上手い人だと思いました。
例えば、貧乏だけど家を失うほどではない、才能もないけど犯罪も犯さない、善人かと問われれば違うけど、悪人っていうほどでもない。
底までいけば誰かの手を借りれるけれど、光と影のちょうど合間で、生きるために生きている、そういう儚さと、生き抜くことの強さと、それに伴う悲しさが淡々と短編で綴られる。
作品で描かれるエピソードから、作品では描かれないその人の人となりや人生が想像できるような筆致に感銘を受けました。
悲しさを漂わせる生々しいエピソードの裏に、そういう人々を応援するような作者の優しさが隠れているのをなんとなく感じたりもしたのが、心が折れなかった原因だと思います。
連作で、張られた伏線がどんどん拾われていくので、それぞれが短編でありながら話が繋がっているのも最後まで飽きさせなかった作者の腕。
物語を構築する才能が羨ましいです。
上記で紹介した去年公開の実写化映画はまだ新しいので、未配信ですが何かの媒体で配信されたら観てみたいと思います。
予告と原作が既に違っている感じがあったので、どうなんだろうという気は若干していますが(笑)
桜木紫乃さんの他の作品も機会が合ったら読んでみたいと思います。
こちらの作品は、特にある程度人生を経た大人の女性にお勧めしたい一作です。
それでは、また。
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※綺麗な装丁です。