読み始めたら、吉本ばななの本当に美しい文章がするすると入ってきて、小説を読みたい!という欲望が満たされて読み終わったあと非常に満足しました。
元々遅読なのに、久しぶりでさらに遅読になり短編集なのに思いのほか時間がかかってしまいましたが(笑)
今回、久々に吉本ばななを読んだことで、わたしにとって非常に思い出深い『キッチン』のことを思い出したので、少しそこも絡めつつ、今回の本のことも書いていこうと思います。
わたしが初めて『キッチン』を読んだのは高校生のとき。
学校の図書室にあったのを読んだのが初めてだと記憶しています。
今思うと、15~16歳で『キッチン』か・・やっぱりクソ生意気な小娘だったな(笑)と自分のことを思うのですが、主人公のみかげは大学生だしすごく感動したことは覚えているので、作者が伝えたかったことが当時はすべては理解できなかったにしろ、ベストセラーなだけに、作品に強い力があるんだと思います。
このハードカバーのモノクロの表紙が印象的で、小説の内容のシリアスさをオーバーに表現しない美しい文章に思春期のわたしは非常に感銘を受けて、その後自分でも買って、引っ越すたびに処分→購入→処分を繰り返し、今も薄い文庫の『キッチン』を所有しています。定期的に読みたくなるのです(笑)
ちなみに表題作の『キッチン』より続編の『キッチン2』のほうが好きです。
今回『体は全部知っている』を読み始めて、改めて吉本ばななの表現力に対して感動していました。
雪国生まれのわたしにとって吉本ばななの小説の文章は【晴れた真冬の雪景色】みたいなイメージです。
読んでいると、夜じゅう雪がしんしんと降った晴れた日の朝、まだ誰も足跡をつけていない銀世界のだだっ広いところに一人で立っているいるよう感じがします。
降り積もった雪が音を吸収してものすごい静寂のなか、太陽の光が真っ白な雪景色に反射してキラキラしてすごく綺麗で、でも寒くて手足は冷たく震えていて吐く息は白く、そんな中日差しがとても温かくて生命力が湧いてくる。
孤独と希望が同時に来るような、そんな気持ちになります。
ちょっと、エモーショナルな表現になってしまいましたが、彼女の小説は真夏を描いていてもいつもなんとなくいい意味で冬の感じがします。
今回のこちらの作品は、文庫で200ページという短い中に13編もの短編がギュッと凝縮されています。
基本的に小説はみんな似たようなテーマが多いですが、特に吉本ばななの作品は、『恋愛(不倫、二股等が特に多い)』、『死』、『家族』、『食』などが題材になっていることが多いのですが、この短編もそういったテーマの作品が多かったです。
わたしはこの13編の中で、特に家族の複雑な関係を描いた『ボート』、『サウンド・オブ・サイレンス』、そして友情を描いた『明るい夕方』が好きでした。
今回、(もう吉本ばななの小説を読むには、わたし自身ちょっと年を取りすぎたかもしれないな・・)と少し思ったのも事実なのですが、13編それぞれに違う魅力があり、
短い間にあまり意気込まなくてもさくっと読ませる力はさすがです。
これで、本を読むリハビリが出来たので、次は桐野夏生の震災後を描いた賛否両論作品『バラカ』か来年の大河に決定している明智光秀が題材となっている加藤廣の時代小説『明智左馬助の恋』にしようかなと思っています。
というわけで、それではまた。
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