話題になっている
『妻はサバイバー』。
読みました。
※書籍版はこちら
特に読もう!と思っていたわけでも内容を知っていたわけでもなく、はてなブックマーク巡回の一環でした。
気軽な気持ちだったのに冒頭から引き込まれ、途中途中でこらえていた涙が止まらなくなり、最後の結末とあとがきには嗚咽しながら読んで頭が痛くなってしまい、読み終わったあとは茫然としてこっちの世界に戻ってくるまでに時間がかかりました。
本書は心の病に苦しむ妻との壮絶な20年にも及ぶ結婚生活を、闘病記の一部を切り取って介護をした夫ご本人が書かれたものです。
「私のように苦しむ人を救いたい」という妻側の意向で朝日新聞の記者である著者が連載で綴ったものをまとめたもの。
4/28日までnoteで無料公開されています。
プロの記者である著者の文章力はさすがでした。
感情を極限まで削った淡々とした筆致、それでいて情景が脳にダイレクトに飛び込んでくる文章でした。
文章で目から確実に入ってくる情報の鮮烈さと、脳に飛び込んでくるイメージ映像の壮絶さで、わたしの中で生涯忘れられない出来事になりました。
夫婦という関係性から邦画のキャッチコピーなら【夫婦の愛の物語】というよくあるキャプションでもつけられそうな内容ですが「愛だけでここまで出来るものだろうか。
愛というのはそこまで高尚なものだろうか」と読んでからずっと考えています。
自分で自分を痛め続けていないと一瞬でも生きていられないほど心が壊れているにもかかわらず、わずかな意識で細胞が生きたい、幸せになりたいと大声で叫ぶ人がいて、そして、目の前の人そんな命を救いたい、ただその人に生きていてほしいと願い、命がけでそれを受け止めた夫。
美談と一言で済ますにはあまりにも悲しすぎ現る実です。
わたし自身、荒れた家庭で育ったので生きづらさを抱えている部分があるため(長らく通院中)、妻側の気持ちに感情移入してしまった部分も大きかったのですが、ヤングケアラーでもあったため、著者の辛さにも持っていかれてしまって胸が痛かったです。
内容のネタバレになってしまいますが、著者ご本人が言う通り介護者が男性で、安定した職があり長い介護生活でも職を失わずともなんとかやってこれたこと、介護者の対応力の高さと元々持ち合わせていたフットワークと地頭のよさで乗り切れた部分はあると思います。
誰しもがこれほどのことはやれないと思う。
そういったわけで【サバイバーのパートナー】という側面をもつわたしのパートナーにこの話の内容をざっくりと話しました。
辛すぎるので読みたくないといったので。
わたしが
「著者が自分が男で、安定した職があったからここまでのことがやれたって言ってて、状況が違ったらどうだったんだろう、もっと世間にはひどいことになっている人もいるしみたいなこと」
といったんです。
そしたら、
「もし、そういう状況じゃなくて本人(著者)もそこまで強くなかったら、逆にもっと違った未来があった可能性もあるし、それはわからない。そっちの方が楽だったかもしれない」
という言葉が返ってきました。
確かにって思ったんです。
やり切った著者はすごいけど、わたしもパートナーの強メンタルに甘えている部分もあるし、著者が力尽きちゃったらどうなってたのかなぁ・・・って。
そして、それを聞いてこれを読んだ当事者がここまでやらなきゃ自分(介護者)はダメだとか、被介護者がここまで家族を追い詰めてしまっているとかそういった罪悪感を抱いちゃう可能性もあるので、これは【とある二人の出来事】だと自分を重ねて考えない方がいいと思いました。
どうしても精神的な部分が弱い人はそういう傾向があるので自戒も含めて。
書きたい思いはたくさんあったのですが、どれも嘘っぽくなってしまう気がしてこのへんでやめておきます。
最後、妻が心を守るために、そして生きるために体が払った犠牲が大きすぎて本当に衝撃の最後でした。
ただ、これしか道がなかったのかもという思いもあります。
そして、著者ご夫婦お二人のこれからの穏やかな暮らしを願ってやみません。
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