たま欄

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『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』美しく爽やかな青春群像劇の傑作。

Twitterで評判がよかったので、ずっと気になっていたNetflix映画の『ハーフ・オブ・イット』

時間も1時間45分と観やすい長さだったことから、見てみたら、これは青春ものとしてはちょっと、いや、かなりの傑作だったと思う。

冒頭の語り『愛の解釈』から引き込まれました。

いやー、いいもの観させてもらいました。

 

コンパクトでわかりやすく、情緒的で美しい。

 

美しい詩や、純文学を読んだあとのようなラストもよかった。

 

観る前は、移民問題、LGBTQ+問題 、人種差別問題、生まれの環境に縛られる人生などがフィーチャーされているような売り文句だったので、ちょっと重いのかなと思っていたけど、これが、うまい作りだった、感服した。

 

確かに盛り込まれてはいる。

盛り込まれてはいるが、重くなる一歩手前で止めてある。

わかりやすくはあるけど重くは感じないのは、登場人物がみんないい人で、みんなのことを好きになっちゃって、みんなの幸せを願っちゃったからだろうなー。

美女と野獣』に出てくるガストン的なキャラクターまでいいやつだったから(笑)

 

主人公のエリー・チュウという女の子の父親役であった台湾の人気俳優コリン・チョウ以外はほぼ新人が起用されていた本作にも関わらず、配役やキャストもちょうどよく、特に文句が見当たらない。

強いていうなら、主人公親子は中国出身といいつつも、ところどころに台湾の香りが漂っていたのは、コリン・チョウが台湾俳優で、監督も台湾系アメリカ人のアリス・ウーという監督だったということで納得しました。

さらに付け加えると、エリーのお父さんがイケメンだということは、けっこう早い段階で気づいていたのでアジアンの有名俳優なんじゃないかとは思っていた(笑)

 

ちなみに、エリーを演じたリーア・ルイスという女優さんはは白人の里親に育てられた英語ネイティヴで中国語は話せないということから、かなり努力を強いられたらしい。

確かに中国語を知らないわたしですら(中国語かな・・?)と迷うぐらいだったので、主人公の女の子が英語ネイティヴだなーとは思っていた。

そもそもアメリカの作品で、主演が英語を流ちょうに話せないなんていうことは、喋らない役以外は、おそらくありえないと思うので、当然といえば当然なんだけど。

 


front-row.jp

 

物語は、アメリカの田舎町のハイスクール。

優秀で文学的な才能を持つ主人公の中国系移民のエリーは、課題の代筆で稼ぎながら父子家庭の生活を支えていたが、ある日、同級生のポールから街の有名人でもある同級生の美女アスターへのラブレターの代筆を高額ギャラで頼まれたことから生活が一変。

恋をしたことがないエリーと、アスターに恋をするポールが、二人がかりでアスターの気持ちを振り向かせようと奮闘するのを軸に、エリーの家庭事情、ポールの夢、小さな町の有名人であるアスターの人生などが描かれる。

それに加えて、田舎の特徴的な景色の描き方、人物、作品全体の雰囲気にいたるまで、なんともいえない美しさと爽やかさを醸し出している青春ラブコメ

 

ここ最近見た青春群像劇の中で一番よかったかもしれないです。

 

それでは、前置きが長くなりましたが、公式サイトを挟んで、うっすらネタバレありの感想に入りたいと思います。

 

www.netflix.com

 

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今、並行してネトフリの『ハリウッド』っていう作品も観ているんですね。

リミテッドシリーズなんで、全部観てから感想を書くつもりなんですけど、ざっくり言うと、昔のハリウッドにおける映画業界が描かれたドラマで、成功を目指す若者が主題とおもいきや、それ以上に、当時の白人至上主義がこれでもかと描かれたドラマなんです。

 

www.netflix.com

 

時代背景的にも色々しょうがないんですけど、ドラマとしては完成度も高く観ていて興味深く面白いのですが、切ない部分も多々あったり、自分の中の差別意識を振り返るきっかけにもなっています。

この時から歴史が動いて、2020年にはオスカーで韓国人監督の韓国語作品が受賞するに至ったわけですが。

 

『ハリウッド』の件はまた後日詳しく語るとして、こちらの作品は、アジア系女性監督、主演の一人がアジア人のアメリカ育ちの女の子ということで、日本生まれ日本育ちのわたしにはうかがい知れない生きにくさというものをそれぞれ体験して、色々な感情を受け入れて、この作品まで来たんだろうなという感想はどうしても抱いてしまいました。

実際、そういう問題も作品内に描かれていますし。

 

海外ドラマ好きとして、アジア人へのエンタメ界での扱いというものはそれなりに見ているし、自分の中であきらめみたいな感情もありつつ、海外エンタメは好きなのはやめられないので、それでもずっと観ています。

今回の『ハーフ・オブ・イット』も多様性を声高に訴えるNetflixだからこそ作れた作品なのかもしれませんが、そういうひいき目を差し引いたとしても、ストーリーの構成などが素晴らしいと思いました。

 

能力がありながらも、半ば人生をあきらめたようになってしまっている父を持つ、アジア系移民の主人公の少女エリー。

父親は、娘に「自分の英語は通じないから」と言い、博士号を生かせず経済的にも困窮する仕事を受け入れてしまっている。

しかし、博士号を持っていて、アメリカにまで渡る能力のある人の英語が発音的な問題はあれど、文法的に全く通じないわけがなく、アジア人ということで差別的な意味合いで排除されてきた過去を思わせる作り。

実際、アメリカ育ちの娘は「父は英語は話せる」と言っている。

エリーは、経済的な問題から、大学は諦めようとしているが学校の先生は進学を勧めていて悩んでいる。

 

もう一人の主人公ポール。

田舎町で古くから飲食店を営む大家族の家に育つ。

料理の才能がありながらも、家族の方針に逆らえない純朴で優しい青年。

だけど、料理への探求心は忘れてない。野心はある。

 

そして、田舎の教会の娘アスター

街一番ぐらいの美少女。

金持ちの息子と将来結婚すると思っているが、文学にも精通していて本当は美術の道に進みたい。

でも、田舎を出たことがない自分、才能にもイマイチ自信がない。

女の子は結婚して家庭を築くのが幸せだと思っている街、家。

たいして好きでもないけど嫌いでもないお金持ちの息子と結婚して、家庭を持つのが幸せだと自分でも思っているけど、迷いがあり、白馬の王子が現れるのを待っているお姫さま。

 

この三人が織りなす群像劇が、文学的な言葉も取り入れられていて非常に素敵だった。

 

今まで交わることとのなかった三人の人生が交わったことがきっかけで動いた運命。

一筋縄ではいかない恋。

 

だけど、エリーは本当にアスターに恋をしていたのかしら・・。

恋をする感情をポールに教えてもらった感じなのでは? と個人的には思ってるんですよね。

恋に恋していたポールが知ったのは愛で、恋に恋するポールを見て、恋を知らなかったエリーが知ったのが恋心という感情だったような気がしなくもなく、そこもそれぞれの解釈で色々個人的に思うところがあるような作品構成もよかったのかなと思います。。

 

まだまだこれからの三人の長い人生が10年後、20年後、幸せでありますようにと願うラストも非常に素敵でした。

 

勢いでガンガン行くぜ! みたいな作品を敬遠してる今の心理状態にもぴったりで、とにかくわたしは大満足です。

 

ネトフリはこれだからやめらんないのよねー(笑)

また、こういう系の作品が観たいです。

 

というわけで、それではまた。

 

 

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