この度、観るのをためていたドラマをhuluで観ようと思ったら(ウォーキング・デッドとか、ザ・ギフテッドとか)、字幕が出ないんですね。
で、英語ができるわけでもないのに、圧倒的字幕派のわたしですが、いくらセリフが少なめとはいえ、ウォーキング・デッドですら見るのは無理と判断しました。
でも何か見たかったので、問題ないAmazonプライムにしようと思って、前から薄々気になっていたこちらの作品『ルーム』を観ることになったわけです。
第88回アカデミー賞に多数ノミネート、ママ役で主演のブリー・ラーソンは主演女優賞を受賞しています。
特にハリウッドの有名俳優・女優が出てくるわけでもなく、ストーリー的にも愉快でも派手でもなく、むしろ見ているのが辛いぐらいなのですが、辛い中にも、生きていく強さ、信じることの重要さ、それぞれの愛の形、人間のあさましい部分なども含まれていて、一言でいうと、『目が離せない』作品でした。二時間が早く感じました。
そして、それ以上に心を打つ作品でした。
この作品に対しての、わたしの事前情報は、何かの事件に巻き込まれ『閉じ込められていた人』ぐらいのものだったし、予告も観なかったので、わたしとしての映画の冒頭は、いきなり始まる親子の生活風景という感じだったのですが、その親子の掛け合いがどうしても他人に思えず、特に子どものジャック役を演じる子は、当時何歳だったのか不明ですが、別のママがいる気がしなかったです。
そのぐらいの演技の上手さ、それに対応するママ役のすごさも含めて、あってなはらないような状況なんですがリアリティを感じる。
俳優と女優の演技のぶつかり合いが前半延々と続く感じです。
そして、色々あったあとのラストシーンはすごくいいので観てほしい。
あらすじも感想も書きたいのですが、ネタバレ不可避と判断しました。
あらすじ書いた時点で何個かネタバレを含んでしまうので、気になった方は、こちらの公式サイトでも観てみてください。
でも、今リンクを貼るのに予告を観てみたところ、かなりのネタバレでした。
ネタバレダメな人は予告も見ないほうがいいと思うし、わたしは予告見ないで観てよかったなと思いました。
(そんな大事なシーンを予告で!?)って驚いたので。
観たあとに予告を見るとじわじわ余韻に浸れるので、逆のほうがいいと思います(笑)
それでは、ここからネタバレします。
↓ ↓ ↓ ネタバレを含んだあらすじ、感想がここから始まりますよ ↓ ↓ ↓
観たあとに、ウィキペディアを見てみると、実際にオーストリアで起きた実の娘を24年に渡り地下室に監禁、暴力で押さえつけたうえ、性的暴行を繰り返し、自分の子どもを8回も妊娠させ、7人の子を産ませたフリッツル事件 - Wikipedia を元に描かれたベストセラー小説『部屋』が原作でした。
原作を読んでいないので不明ですが、この『ルーム』は、フリッツル事件が凄惨すぎるためか、元々の事件とストーリーは違い、17歳の少女ジョイが人助けをしようとしたところ拉致され、必要最小限の生活できるスペースとある程度のインフラを兼ね備えてはいるけれども、外に出ることだけはできない部屋に閉じ込められ、その後7年間の監禁生活を強いられるなかで、子どもを身ごもり一人産み育て、脱出と脱出後の周囲の人たちや本人、子どもの感情などが作中に描かれています。
話のスタートは、もう監禁されてから7年経過していて、息子が5歳の誕生日を迎えるところです。拉致監禁の犯人は、週に何度か食料品や日用品を差し入れしつつ、性的欲求を満たしに現れます。彼が子を守るための命綱である以上、言うことを聞くしかないジョイに同じ女性として切なさを感じます。
息子が5歳という、ある程度知能も発達し、親のいうこともある程度色々なことを理解するようになったので、母のジョイが息子を利用した脱出作戦を試みるまでが映画の前半。
不幸中の幸いで、監禁部屋にはテレビが用意されていたので、息子のジャックはテレビから色々なことを学び、読み書きはジョイが丹念に教えたのでしょう。絵本を読んでいました。このことからも、母のジョイが息子を大事にしていたことが伺い知れました。
たった一人壁に囲まれた部屋で自由を完全に奪われていたジョイにとって、新たな命は希望であり、生きる全てだったことは想像に難くなかったです。
その自分の全てである息子と永遠の別れになるかもしれないリスクを負いながらも、息子だけでも外に出そうという『部屋』からの脱出作戦は見ていて本当にハラハラしましたし、今思い出しても泣きそうです。
外の世界を初めて見た息子の戸惑いと衝撃の演技は、大人でもマネできなそうなほどでした。
脱出作戦が成功し優秀な女性刑事のおかげで、ジャックと母が再会できたときは心からホッとしましたが、脱出後の生活に一抹の不安を覚えた瞬間でもありました。
ジャックは5歳にして、今までは母と2人だけの世界で、母に守られるだけの存在であったものが、生まれて初めて接する母と犯人以外の生身の人間や社会と向き合うことになり、母のジョイはセンセーショナルな事件の被害者として世間の好奇の目にさらされるうえ、時が止まってはいなかった外の世界や家族と向き合い、心が壊れていくさまも辛かったです。
「あの部屋に帰りたい」とことあるごとに言うジャック。
ジャックにとっては、全く辛い場所ではなく幸せしかなかった部屋だということを思い知らされるし、決死の脱出も大好きな母のためだった。
そして、犯罪被害者という人生を背負ってしまったジョイにとっても、周りから自分を守ってくれる壁でもあった。
全ての演出に心を打たれたと言っても過言ではなかったです。
事件をきっかけに離婚していたジョイの両親、ジョイの母に新しいパートナー、レオが出来ていたこと、母とジョイの確執、生物学上犯人の子だという自分の孫をどうしても受け入れられないジョイの父、失礼なことを言う記者。
そして、男性を怖がっていたジャックがレオに心を開き始めた時は、こういう時はやっぱり信頼できる他人は強いと思ったことや、母のためにずっと長く伸ばしていた髪の毛を切る決意をし、髪を切ってくれた祖母に、「おばあちゃん、大好き」と言うシーンは涙なしには見られなかったです。
あと、個人的にレオの犬とジャックの対面シーンは、犬がすっごく可愛かったのとわたしも対面したかったので泣きました(笑)
ラストに、「あの部屋を見に行きたい」というジャックに付き添う母のジョイ。
わたしなら、無理そうだけど、ジャックの成長に必要だと判断したであろう母は強い。
母と息子2人での『部屋』との決別は、映画のラストとして素晴らしいと思いました。
huluの字幕が出なかったという理由で観ることになってしまった映画でしたが、主演女優賞も納得のとても心に残る名作だったと思います。
そして、 ジャックにも助演男優賞あげてもよかったと思います。
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