2019年第91回アカデミー賞の発表があったのが、つい先日の2月25日(現地時間)でした。
作品賞を獲得したのは『グリーンブック』で、スケジュールの関係で日本の公開日初日に観に行くことになってしまったので、いち早くご報告です。
『グリーンブック』は、今回のアカデミー賞では作品賞のほかに、黒人の天才ピアニストを演じた、マハーシャラ・アリは『ムーンライト』に次ぐ二度目のオスカー助演男優賞、そして、脚本賞と三冠となりました。
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~あらすじ~
ドクター・ドナルド・シャーリーはカーネギーホールの上のお屋敷に住む、黒人の天才ピアニスト。黒人差別の強い地方をツアーで回るため、クラブで用心棒をしていたイタリア系白人のトニー・バレロンガを運転手に雇うことにする。
上流階級育ちのドクター・シャーリーと、アンダーグラウンドな世界に生きる陽気なイタリア人トニーの旅は、最初はストレスのたまるものとなるが一緒に旅をしていくなかで、シャーリーはひどい差別に遭い、トニーは黒人差別を実際目の当たりにし、自分の中の差別意識にも変化が起き、二人の中で絆も芽生えていく。
一言でいうと、『グリーンブック』はよくも悪くも、『アカデミー賞の作品賞っぽい作品』でした。
品がよく淡々としていて、娯楽性よりもメッセージ性が強い、実話ベースの話。
でも、わたしはその淡々とした感じの作風にかなり胸を打たれました。
『グリーンブック』とは、平たくいうと黒人専用のトラベルガイドです。
黒人専用ホテルや、黒人が入れないレストランなどが明記されています。
名目は【黒人に快適な旅を】ですが、暗黙のルールで差別がなされている世の中で、差別が如実に明確化されて形となっているものということになります。ですが、その【差別本】に従って行動しないと、黒人の旅は、逮捕されたり命に危険が及んだりします。そもそも白人は『黒人が旅をするなんて・・』ぐらいの意識を持っている。
一歩外に出るだけで、黒人はなにか得体のしれないものに怯えて生活していなくてはいけなかった。
そんな時代に、たぐいまれな才能をもった黒人として生まれてしまったピアニストが白人上流階級へピアノを聴かせるための一ツアーを描いたのが今回の作品。
たった二か月のツアーでも胸が痛んで泣けるほどの出来事に何度も遭遇します。
今回、『グリーンブック』が作品賞を獲ったことで、各方面からも批判もあったようですが、その批判内容が「黒人差別時代に白人の救世主が現れる内容。白人称賛映画だ!」ということらしく、制作陣も白人ばかりということが批判の口実として問われたらしいのですが、わたしは日本人であるということと、黒人ではないということもあるのかもしれませんが、この作品を観た直後は「今年の作品賞はこれでよかった」と思いました。
作品賞を獲ったことで、日本人もそうだし世界中でみんなこの作品を観るからです。
それに、『白人の救世主が現れる内容』の映画というのは、もうはっきり言っちゃうと、この映画に対する的外れな評価だと思います。
実際、今回のオスカーでは、主演男優賞は逃していますが、助演男優賞は受賞しているじゃないですか。
ただただ、『グリーンブック』を批判したかっただけとしか思えません。
あと、実話ものあるあるで、登場人物の実在の家族ガー、とかいう話ももちろんあったようなのですが、映画はドキュメンタリーではないため、ある程度の脚色は仕方ないとわたしは思う派なので、実際の話が知りたい人は伝記でも読めばいいと思うのです。
わたしは、黒人であるピアニストのシャーリー本人が、才能で黒人差別に立ち向かう映画だと思いました。暴力ではなくて、才能で。
黒人が白人に暴力をふるったら殺されちゃうし。
それが、たとえ無謀なことだったとしても、彼が突き動かされて行動したんだと。
別にトニーは救世主ではないです、ただ人として普通に行動し、仕事をしていただけです。ただ、仕事をやっているうちに2人に友情が芽生えたってだけ。
お互い相容れないと思っていた2人が、色々な事件を乗り越えて友情を構築するまでの過程が素晴らしいので、それを深く考えずに素直に受け止めればいい映画だと思います。
だって、友達を助けたいと思うのは当たり前じゃないですか。
あと、差別がー、差別がー、言いすぎるとこの作品を純粋に楽しめないです。
もっと、映画として評価できる部分がたくさんありました。
まず、音楽。
これは、もう天才ピアニストが出てくる作品なので、素晴らしい。
映画館の音響でスタインウェイピアノが奏でるジャズピアノ楽曲を聴ける。
こんなチャンスそうそうない。
映画の後半、シャーリーが本気出すシーンがあって、そこが一番音楽的には感動するので未見の人は楽しみにしていて欲しいです。
次に、食べ物。
どのごはんも、めちゃくちゃ美味しそう。
トニーはイタリア系の白人なので、家料理がイタリアの家庭料理。
いつものアメリカ料理より断然おいしそうであり、旅の途中で食べるごはんもおいしそう。
シャーリーとトニーの関係に転機が訪れるシーンも食べ物がきっかけ。
そして、主演2人の演技。
都合上、主演と助演になっていますが、わたしは2人が主演でいいと思う。
どちらの演技も素晴らしい。
特にシャーリーは気難しい役ですが、静かな表情で心理描写するのがうますぎる、泣ける。
2人の掛け合いはバッチリ。バディムービーとしての完成度は高いです。
映画自体に、『グリーン』がキーワードになっていて、色々なグリーンが出てくるのも楽しかった。
ラストは実写ものって感じの終わりかたなんですが、(いい映画観たな)で終われる作品でした。
映画から伝わったメッセージは、変な固定観念に囚われず、自分の好きな人を大事にしろ! 美味いものを食え! そして笑え!!でした(笑)
泣いたり笑ったりできる良作だと思います。
それぞれの観点で『グリーンブック』を楽しんでもらえたらと思います。
それでは、またー。
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