クリント・イーストウッドの監督・主演映画の『運び屋』(原題:The Mule)。
Amazonプライムビデオ週末レンタル100円の時に購入していた作品でしたが、もたもたしているうちに期限が切れそうになり慌てて視聴。
なので、正直『運び屋』的な心の準備はできてなかったのですが、結果「映画っぽい映画を久々にきちんと観た」ような気持ちになって自分的には清々しかったのでよかったです。
最近、ちょっとホラー系ばかりに視聴が偏っていたので(笑)
事前情報を得ずに観たのですが、こちらの作品は実話をもとにした作品でした。
モデルになった人物のあらましを調べたら、映画の内容とほぼ一緒で。
軍人であったレオ・シャープ氏(実写モデルの人)は退役後、ミシガンに農地を持ちデイリリーという品種の花の園芸家として名を馳せたが、ITの波についていくことができず85歳でメキシコのカルテルの運び屋を始めた・・という、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事が元になっていました。
ちなみに原題の【Mule】とは、女性のパンプスの一種である、かかとがないつっかけ的なヒール靴のミュールと一緒の綴りです。元々Muleは、動物のラバという意味の言葉で、ラバが働く動物であったことから、運び屋の隠語になったのかなとも勝手に思うのですが、ラバの足も非常にミュールっぽいです(笑)
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主人公が85歳過ぎている(モデル・イーストウッドともに)ストーリーということで、
本人のテンションが上がっていたとしてもガチャガチャしたうるささがなく、基本的に淡々とした静けさがとても好感触な作品でした。
静けさの中に隠されている思いや、時代や環境に流されてしまった一人の男性の人生がナチュラルに描かれており、ストーリー自体に激しい波はないものの、ラストまで観てしまう力はあり、綺麗にまとまってもいます。
ところどころに差し込まれるアメリカの広大な景色とカントリーミュージックも、目と耳に非常に心地よかったです。
イーストウッドが伝えたいテーマはしっかりと伝わってきたし、想像力を掻き立てられる映画でもありました。
現在のクリント・イーストウッドだからこそ描けた世界観だったとも言えるかと思います。
そして、監督だけではなく主演を務めたクリント・イーストウッドのナチュラルな演技も素晴らしい。
もしかしたらモデルのご本人は全然違うタイプだったかもしれないけれど、イーストウッドが演じるアールみたいなタイプの人物だったら、メキシコカルテルが何年にも渡り、自分たちにとって非常に大事な品物を預けた理由がわかる気がしました。
実際問題、後期高齢者がトラックの荷台に数十億円相当を積んでハイウェイを滑走しているとは思わないので、人間の先入観の隙を突いた作戦だったとは思います。
わたしが大好きなお下劣コメディ映画『なんちゃって家族』では、子連れのファミリーが運んでたし、わたしが運んでいたとしてもスルーされる確率は98%ぐらいだと思う(笑)
ただ、一個だけ残念だったのは車ですねー。
冒頭に乗っていた壊れそうなトラックの方が好きだったなー。
あの車のほうが雰囲気出たと思うけど、乗り換えた車は車であれが闇なんですよね。
観てもらえば言いたいことは伝わると思う。
ちょっと言葉にするのは難しい感情です。
そして、メキシコのカルテルを追うDEAの現場の捜査員としてブラッドリー・クーパーが登場しています。
映画の雰囲気を壊さない非常に落ち着いた演技で、すごくよかったです。
さらに、本作品では、クリント・イーストウッドの娘であるアリソン・イーストウッドがクリント・イースト・ウッド演じるアールの娘役として登場しています。
父娘関係を拗らせている親子関係が描かれているのですが、それを実際の父娘が演じているというところも見どころではないでしょうか。
人生がテーマとして描かれている本作品ですが、意見が分かれそうなところは、何故主人公が一度で辞められず、数年にも渡って運んでしまったのか・・というところだと思うんです。
非常にシンプルな理由かもしれないし、複合的な感情が折り重なっていたのかも知れなくて、本人に聞いてみないとわからないところではありますが、ああいう状況になったら続けちゃう人多いんじゃないかなと思いました。
レオ・シャープ氏ご本人は「デイリリーと同じ人を幸せにする植物だから」と語っていたらしいのですが、幸せにできる何倍も本人や周囲を含めて不幸にする植物なこともわかっていたと思う。
彼が運ばなかったとしても結果は同じだったかもしれないけど、彼が運んだモノが実際アメリカにたくさん拡がったと思うから。
そういったことも含めて、実際の出来事がモデルとなった実写化というのは、非常に難しい側面もあって淡々とした描写になることも多く、この作品も美談で片づけてはいけないという強い意思も感じたんです。
なので、残酷な面は残酷なままにしっかりと描かれていて、もちろん脚色された部分は多かったと思うけど感情的なリアルさがあって、胸に迫った。
御年89歳になっても映画を作ることへの情熱を燃やし続けるクリント・イーストウッドだからこそ、彼が運び続けてしまったことに共感できた部分があって素晴らしい作品が生まれたのかもしれないけど、それなりの葛藤も感じられる作りではありました。
「遺作になっても構わない」と『運び屋』公開の際に豪語していたようですが、遺作になるどころかクリント・イーストウッド監督作の新作が今年アメリカで公開されるようです。
そちらの作品も実在の人物をモデルとした作品のようですので、非常に楽しみですね。
それでは、また。
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