Netflix『誰だって無価値な自分と闘っている』完走しました。
脚本が『マイ・ディア・ミスター』、『私の解放日誌』の脚本家・パク・ヘヨンということで、本当に珠玉の心に刺さるセリフの数々でした。
ドラマの内容としては、夢を追ったまま40代に突入してしまいうだつが上がらないものの飄々と生きる男性と、幼少期に母に捨てられた傷を抱えたまま大人になり人に心を閉ざしながら生きてきた女性がメインで、その二人を中心に周りの人々の人間模様を描く物語です。
映画監督も含めた映像制作の会社や俳優などが登場人物として描かれているので映像作品を観るのが好きなわたしとしてはそういう裏話的なことも観られてすごくよかった。
詩的で哲学的な抽象的な内容でありながら、映像というジャンルに落とし込めたことで伝わりやすくなっていたんだなと今は思っていて、相変わらず「ヒューマンドラマが上手い韓ドラ」って感じでした。
脚本家が何人もキャラクターとして出ていたのでセリフにリアルさも感じられました。
全体としては、
人生に立ち向かう人間の弱さと、それでもなんとか生き抜こうとする底力。
弱い人間同士が寄り添って生きるほんのりとした温かさ。
そして作品から漏れ出る人間への愛と賞賛が随所に盛り込まれており、それらをドラマを通して受け取りに行く時間で、心の洗濯ができたようなそんな心に残るドラマになりました。
同じ脚本家の作品を三作品観て思ったことは、この脚本家さんは人間のダメなところも含めて人間が人間であることがすごく好きだということです。
本来人間はそんなにちゃんとしてない、流動性もあり気持ちも変わるし一貫していない。
ダメでもいいとかじゃなくて、そもそもダメなんだから偉ぶったってしょうがないというところが「誰だって無価値な自分」というところに繋がっているんじゃないだろうかと思ったりもしてました。
最近は疲れていたり気持ちに波があったり、雑念がわいてきがちなドラマ視聴だったけれど、すごく集中して観ることができて非常に充実した時間を持つことができて嬉しいし、あまり同じドラマを繰り返し観ないけど二周目もありかなーとすら思っているほど気に入りました。
『誰だって無価値な自分と闘っている』を観る前に『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を観ていたのですが、その中のエピソードで一番印象に残っていたエピソードにゲスト出演していたク・ギョファンが主人公の男性ファン・ドンマンを演じていて、ウ・ヨンウの時から心に残る演技で非常に期待していたのですが、期待以上の演技。
解放日誌でもそうだったけど、今回の作品でも女性が男性に抱く安心感や魅力というものを可視化するのが非常に上手い脚本だったと思うし、バイトなどはしているけれど定職についておらずしかも40代であり、ピーターパンのような人生を貫いている主人公が人からは完全には嫌われずうざがられながらも愛されるキャラクターをク・ギョファンはきっちりと演じ切りました。
あと、これは個人的に大好きなドラマ『酒飲みな都会の女たち』に出ているハン・ソナが途中から出てくるのですが、今回もめちゃくちゃよかった・・・。
ちなみに上記『酒飲みな都会の女たち』は女三人の親友たちでドタバタする飲酒コメディーなのですが、最初は普通のコメディードラマとしてスタートするものの、5話ぐらいから風向きが変わってすごくいいヒューマンドラマになってくるのでお勧めです。
本当に大好きなドラマ。Amazonに来てくれてうれしい!!
いろんな人に観てもらいたいです。美人なハン・ソナ観てください。
さて、話を『誰だって無価値な自分と闘っている』に戻します。
色々言いたいことはあるのですが、一つはメインキャスト二人の心の交流の小道具として【感情ウォッチ】というアイテムが採用されていたことです。
ヒューマンドラマでこういうありそうではあるけれど、存在はしていないアイテムとか出しちゃうんだー。発想がすごいなーととても感心していました。
この記事を読んでいる方でまだ観ていない人も多いかと思うので、感情ウォッチがどういうものか説明すると、スマートウォッチみたいな代物でそれをつけた本人がネガティブな感情を感じた場合は警告音が鳴り時計の文字盤が赤く光り【不安】【恐怖】【怒り】などが表示され、逆にポジティブな感情の時は緑になって【安心】などと表示されるものです。
それの製品化に向けての市場実験にドラマのメイン男女二人が参加していて、それが物語序盤に作品のキーアイテムとして頻繁に出てきます。
わたしがそれを見ていて思っていたのは(わたしもあれ欲しいな)だった。
自分で消化しきれないもやもやした感情がブワーッとわいてきたときに、今あなたはこんな感情ですよ、とお知らせしてもらえれば自分は今不安なんだなとか、怒っているんだなってそうだよね、怒るよねこの状態だったらって自分を俯瞰で観察できてメタ認知のトレーニングに役立つような気がしたし、そういうコンセプトで開発された製品なんだとも思った。
そして、後半その感情ウォッチがすごく大事な伏線であったのを知って、こういう描き方はすごいと思って非常に感動しました。
時代に沿ったこういう心の通わせ方の表現ができるんだと思って素晴らしすぎた。
これはもう脚本の勝利といっても過言ではないです。天才だなと。
あとはやっぱり女性の脚本家さんなので、女性の心理描写の解像度とキャラクター設定、女性から見た男性の解像度が非常に高いです。
クズでダメだけど弱さと並列のため、嫌いになりきれず愛情をもって接してしまう女性陣。
ドラマ内で一番好きで応援していたキャラクターは小さな映画制作会社の代表で、ぐずついている映画監督の夫の尻を叩くみんなのまとめ役ヘジン代表です。
終始人として尊敬できるキャラクターで、絶対にしぬまで幸せであってほしいと今は祈っています。
そして、今回のドラマのヒロイン?であり主人公の精神的支えになる、母との関係のトラウマで心が氷のようになってしまって生きているピョン・ウナ。
わたしも母との折り合いが悪かったので、気持ちがわかるなーと思う場面が何度もあった。
あと、ウナに口で勝てないのに何度も挑みに行く先輩の解像度も高かった。
ああいう人いる(笑)
ウナの会社の代表でウナにパワハラしてた嫌なキャラクターも完全な悪ってわけでもない感じに描かれていてすごいなと思っていたし、併せてサンガプ屋台では超絶いい人の役をやっていたのでその影響もあったからか最後まで嫌いになりきれなかったのもキャスティングの妙なのかなー。
※サンガプ屋台はSFっぽい感じですがいいドラマなのでお勧めですよー
ウナのシーンで一番印象的なのはドラマ内でウナが絶望的になっているときに「この人はわたしの心を言語化してくれた」ってパーって目からうろこが落ちるシーンがあるんですけど、感情ウォッチのくだりともつながるのですが。自分の心のもやもやを言語化してくれる人に対する思いってすごくこう神格化したくなるぐらいの衝撃なんですよね。わたしにもその経験があって、すごく共感したな。
最後になりますが、ドラマを観ている間「無価値な自分」っていうことについてずっと考えていたんですが、たとえばわたし。
わたしを「無価値」だと世界中で一番思っているのってわたしなんですよね。
わたしは親にもいわゆる普通には愛されなかったので、無価値さを感じやすい人生ではあったけど、他人のことを無価値だと思ったり考えたりしたことはなくて。
もちろん嫌いで嫌いで仕方ない人とかは全然存在してますけど(笑)
嫌いだから無価値かというとそれも違うし、自分が個人的に嫌いなのとそれとその人の価値を測るかどうかはまた別問題。
自分のことを無価値だとジャッジしているのは世の中で自分だけだなと最終的に気づいたし、でもだからといってすぐに自分のことを価値のある人間だとは思えないから、わたしから見ればすごく成功していて無価値だなんて一ミリも思えない人でも「無価値な自分と闘っている」んだろうと思う。
作中で何度か「人生の目的は?」っていうセリフが出てきて答えると「目標じゃなくて目的」って返される。
今までは生きのびるのに精いっぱいであまり考えたことなかったけど、残り少なくなってきた人生だし、これからはちょっと考えてみたいと思いました。
あと、少し詩を読んでみたくなったりした。
というわけで、それでは、また。
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