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【本】夜また夜の深い夜 桐野夏生 感想 不思議で闇も深いけど、読後感はそれほど悪くない一冊。

未見の桐野夏生作品を読もう シリーズ! 第二弾。『夜また夜の深い夜』です。

 

 

夜また夜の深い夜 (幻冬舎文庫)

夜また夜の深い夜 (幻冬舎文庫)

 

 

 
(少ないです。14本中7本が桐野夏生作品です(笑))
 
 
『夜また夜の深い夜』とは、また不思議なタイトルだと思いませんか?
見れば見るほど、聞けば聞くほど、考えれば考えるほど不思議な気持ちになってくる。
そんな不思議ワールドが全開に開いた作品がこの、『夜また夜の深い夜』でした。
 
主人公は、イタリアのスラム街にひっそりと身を潜めて母と2人、貧乏暮らしをしている19歳の日本人の少女マイコです。
その少女の母は整形を繰り返し元の顔を捨て、マイコは母の本当の顔も名前も知らされず、幼少期は海外を転々とし、素性を隠しながら幽閉のような環境で生きてきています。
その少女が日本の雑誌で見かけた日本人の七海という特殊な境遇の女性にシンパシーを抱き、幼少期からの母との生活、自分の仕事や楽しみなどの内容を綴った手紙を1通、2通と繰り返し書いていくことで物語が進んでいきます。物語の中盤までは、全てその七海宛ての手紙です。
 
『何か』から身を隠して生きているのはわかるけど、その『何か』を全く知らされずに育った大人と子供のはざまの少女マイコが何を思ってどう暮らしているのか、手紙に詳細に書かれているのですが、自分へ送られてきている手紙のようで、不思議な感覚になります。舞台がイタリアということもその不思議さに拍車をかけました。
 
手紙を書くことで自分の気持ちを整理したり、思いを強くしたりしている中、マイコはある出会いから、母への反発心を強め家出をするのですが、そこからまた物語があらぬ方向へ急展開していきます。
そこからは手紙ではなく、本人の備忘録という形です。
淡い恋や、母とのいびつな愛憎混じりの親子関係、壮絶な過去を持つ友との出会い、育まれる友情、社会の闇で生きるということ、全て凝縮されています。
 
そして物語後半にかけて、突如明かされるマイコとその母の素性。
今まで作品のところどころに散りばめられていた伏線がドバーッと回収されます。
ラスト数ページは本を捲る手が止まらなかったです。
『普通』に毎日暮らしている人の向こう側の社会に確かに存在している人たち。
普通とは何か、普通とは果たして善なのか。
 
そして、七海に宛てて書かれる最後の手紙、最初の七海宛ての手紙とは違うマイコがそこに存在しました。
 
 
この作品をものすごく単純に感想を表現するならば、『起承転結のはっきりした映画を観ているような作品』って感じでした。
突飛な世界観でありながらリアリティもなくはなく、世界のどこかにマイコやマイコの母が存在しているような気になっているし、実際マイコのように生きている人は居るんだろうなと今では思っています。
 
 
 
こんなに短いレビュー記事でありながら、実はものすごくこの記事を書くのに時間がかかりました(笑)
どう書いていいのか、どこまで書いていいのか考えながら書いていたので、多分支離滅裂だし、感想をうまく表現できていないような気がします。
 
ただし、読み終えると『夜また夜の深い夜』というタイトルが、作品全てを表しているような気がするのでそれもまた不思議です。
興味のある方は是非、この不思議ワールドに浸ってほしいと思います。
 
それでは、また三作目でお会いしましょう!

 

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