ちょうど読み終わったので、今週のお題「読書の秋」で投稿してみます。
2001年度の江戸川乱歩賞受賞作品です。
作品タイトルの『13階段』の通り、死刑をテーマとしたお話です。
主な登場人物はベテラン刑務官の男、南郷と南郷が刑務官をしていた刑務所に傷害致死で服役していた仮釈放中の若い男三上。
この2名が、10年前の強盗殺人事件の容疑で『死刑が間近に迫っている男』樹原に冤罪の可能性があるとのことで、事件の謎を追うストーリーです。
高野和明さんの本を読むのは初めてでしたが、さすがの江戸川乱歩賞、面白かったです。
男性の作品は文章の相性が合わず苦手だったりすることも多いのですが、こちらの作品はクセがなく読みやすい文章で、長さもちょうどいいし、テンポもよくすらすら読めました。
ただし、文章は読みやすいですが、テーマは重いです。
いつ自分の身に降りかかるかわからない、犯罪の加害者と被害者の立場。
そして犯罪が起きたことにより巻き込まれるさまざまな人々を、落ち着いた筆致で淡々と描いています。
罪を犯すもの、罪人を捕らえるもの、法を作ったもの、罪を裁くもの、罪を受け入れるもの、すべて人間だという難しさが問われていました。
こちらの作品の重要なテーマのひとつである死刑制度問題。
色々な作品を読んだり観たりしていて、考えたことがなかったわけじゃないのですが、死刑制度の裏には、死刑を執行する人が居ます。
死刑囚の犯罪の被害者でもなんでもない人たちが、仕事だという理由で死刑を執行する生々しさが、今までにないほど胸にずしんと響きます。
ある意味、彼らも犯罪の被害者だと思いましたし、今まで運のいいことに犯罪関係とは無縁で生きてきたわたしに、職務だからといってそれができるのかどうかわからないし、もしできなかったとしても誰にも責められないと思いました。
そして、テーマは重いながらもミステリーとしての魅力もふんだんに盛り込まれている作品でもあります。
作品随所に盛り込まれている小さな伏線たちが終盤グワーッとすごい勢いで回収されていきます。
予想していたこと、予想もつかなかったこと。話が二転三転してすごく引き込まれました。
ページをめくる手が止まらなく、ラストまでは誰にも邪魔されたくなかったです(笑)
作品としての長さもちょうどいい感じで、文句のつけようがない一作でした。
江戸川乱歩賞、満場一致も頷けます。
最後に、こちらの作品の解説はこの年の江戸川乱歩賞選考委員であった宮部みゆき氏が書いているのですが、『宮部みゆきってこんな砕けた文章書く人なんだ(笑)』っていう新しい発見がありました。
自分が原作の映画の作品に不満が募っているのか(思い当たるふしはあります)、こちらの『13階段』の映画化の出来栄えに作者が満足していない話から解説はスタート(笑)
それでもしっかり、作品のテーマに言及もしていてさすがだなと思いました。
最後の解説までしっかり楽しめるこちらの一冊。
秋の夜長に静かに読める重厚さのある一作だと思います。
ミステリー好きな方におススメです。
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