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【本】吉原手引草 松井今朝子 吉原ものの入門に最適な傑作

平成19年上半期 直木賞受賞作、吉原手引草 松井今朝子著 感想です。

 

 

吉原手引草 (幻冬舎文庫)

吉原手引草 (幻冬舎文庫)

 

 

 

ちょうど、10年前の直木賞受賞作です。

私は、吉原ものの時代小説が割と好きでよく読むのですが、

この作品は、吉原ものとは言っても、少し雰囲気が違います。

 

吉原が舞台の小説は、トップ遊女である花魁がだいたい主人公で、

その花魁の周りの下っ端遊女や、遊郭内の働き手の暗い生い立ち、

遊郭で暮らす人々それぞれの切ない生活、

悲恋が描かれているものが多いのですが、

そういうのを期待していると、ちょっと違うとなるかもしれません。

ないこともないですが、メインではないです。

 

実際、吉原ものには当たり外れも多いのですが、

こちらは当たりです。

 

ある、花魁が忽然と失踪した事件のことを、

各関係者に聞きまわる若い男のインタビュー形式の小説です。

たまたま偶然ですが、愚行録と同じ形式。

 

 

meganetamago.hatenablog.com

 

 

遊女の失踪は遊郭ではかなりの事件、

しかも遊女界のトップスターである花魁となると、

それはもう、遊郭中を巻き込む大事件なわけです。

その失踪の真相に段階的に迫っていきます。

 

 

こちらの作品のおススメポイントとしては、

時代小説にしてはかなり読みやすいことを、

まず上げさせてもらいたいです。

語り手が遊女ではなく、吉原の内部で働く人たちや客なので、

作品全体に独特の暗さがあまりない。

 

 

そして、文庫にしては字が大きく行間が広い。

私は本好きなのですが、かなり読むのが遅いので、

進んでる実感、読めた達成感は大事です。

本のレビューが少ないのは読むのが遅いためです(笑)

 

吉原に詳しくない人にもわかりやすいように、

語り手が、いちいち吉原の独特ルールを説明してくれるのもいいと思います。

それも、脚注とかじゃなくて、

本文にうまく盛り込まれてる、

読者に優しい仕様です。

 

江戸時代に吉原で力強く生きていく人たちの、

様々な”粋”がふんだんに描かれていると思いました。

本当にそこに存在して、話を聞いているかのような、

著者の筆力が感じられます。

 

 

そして、特筆すべきは、さすが直木賞!という作品の魅力です。

前半の伏線の張り方、後半の回収の仕方が見事すぎます。

オチを言いたくてたまらない(笑)

 

まさに予想を裏切る時代小説。

失踪事件の真相が、まさかこんな結末だったなんて!

後半は一気読みです。

映像がバーッと浮かんできてゾクゾクしました。

こういうのを実写するべき!

 

 

時代小説初心者や、時代小説好きだけど、

未読の方におススメしたい、傑作でした。

 

 

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