『クワイエット・プレイス』を検索すると必ず出てくる『クワイエットルームにようこそ』は既に視聴済みだったが、内容がうろ覚えだった。
最初に観た時より人生経験を積んだ今、この映画がどう自分の目に映るのか気になったので再視聴した。
映画の内容がふざけているようで、とても真剣だったので、わたしも真摯に感想を書く。
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ネタバレを知っていても、この作品が必要な人には見るべき価値があると思うので、若干のネタバレを含んだまま感想を綴っていこうと思う。
世の中には、死んだ方がよっぽど楽な事情を抱えたまま生きている人が居て、半分死に片足を突っ込んでいる人が死なないように、必死になって救おうとする他人がいる。
っていうのが、この映画のメインの感想ですので、ネタバレ一切アウトの方は、観てから是非戻ってきてください。
前半は、内田有紀がすっごい綺麗でどの角度から見ても美しく、変な服を着ていても、破天荒な感じにしていてもとにかく綺麗で、それをぼんやり眺めているうちに、キャラの立った人たちが登場し、ストーリーも若干おちゃらけた感じで話が展開して、とにかく不思議ワールドで、笑っていいのかダメなのかわらないけど、結果的に不謹慎だけど笑ってしまったりして、すっかり松尾スズキの世界観に引き込まれる。
主人公の明日香を演じる内田有紀が、美しいだけではなく、自分が壊れているのか壊れていないのか自覚がない状態のギリギリのラインの状況を非常にうまく演じていて、客観的に見ていると(おそらく、ヤバい)って感じではあるのですが、大丈夫なのか大丈夫じゃないのか判断するのが非常に難しく、精神疾患も病名はあるにしろ『ここからが病気で、ここからが正常ですよー』っていう明確な基準があるわけでもない。
そして、自分も周りも壊れていることに気づかない人ももちろんたくさんいて、依存症とか摂食障害とか、自傷とかそういう行動があって、周りも(この人は、確実にヤバい)ってなり、病院に連れて行ったりするから心の病気は非常に難しい。
実際、わたしもボーダーラインに近いところにいるのかもしれない。
映画内でも入院している患者で『自分は病気でここに居る』ということを心の底から全員が思っているようには思えなくて、逆に『自分は普通なのに、ここに閉じ込められている』と思っている人の方が多いように感じたし、実際そうなのかもしれない。
だけど、『自分じゃない誰か』の手によってあそこに居る人たちが多かったので、まだ恵まれているんじゃないかと思ったこと。
主人公が死にかけているときには助けてくれる恋人が居たこと。
一人だったら確実に死んでいたけど、彼が必死になったことで彼女は生きながらえた。
わたしが映画から強く感じたのは、死にたいと思う人に生きていてほしいと心から願う人がいることと、人が命を失うことを、一生懸命止めようとする他人がいることだった。
入院患者たちの悲しさや切なさに焦点が当てられがちな映画だと思うし、実際わたしもいちいち心が痛んだ。
主人公の内田有紀を初め、大竹しのぶや蒼井優が演じていた役などと似たような境遇の人が周りに居たら、どうしていいかわからない。正解もない。そして、自分もああなるかもしれない。
だけど、精神科病棟で働く看護士さんたちは身内でもないのに、患者さんたちに治ってほしいと心から思っているように映画内で描かれていたことに、非常に興味を持った。
お金のためだけではできない辛い状況や精神力が必要な職場だと思うし、特にメイン看護士で登場していたりょうと平岩紙の2人はそれが顕著に描かれていて、人には誰しもその人の命が消えるのをよしとしない人が必ずいる、近しくても近しくなくても。
最初は、本当に事故かもしれないと思っていた主人公・明日香の入院だったけど、彼女の過去が掘り起こされるごとに切なさが強まっていく。
大竹しのぶが「あんたは重い女だ、でも生きるって、重いことよ」って明日香に言う。
名女優大竹しのぶの見せ場なのに、わたしは何故か松尾スズキの声で聞こえたシーンだった。
例え重さに耐えられなくても、重くて潰されたと大声で叫べばいい。
叫び散らせば、誰かは気づいてくれる。
わかってはくれないと思う、でもわかろうとはちょっとは努力してくれることもある。
みんなひとりだけど、ひとりじゃないっていう映画だったと思う。
原作も気になるので、読んでみたいと思います。
読んだら報告します。それでは、また。
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