たま欄

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『クワイエットルームにようこそ』 松尾スズキが「生きるのは、重い(でも、死ぬな)」と言う。

Amazonプライムでレンタルしていた、ホラー映画クワイエット・プレイス』。
ホラー映画にこういう言い方は適切かどうか不明だが、とても面白かった。
レンタル期間中の48時間の間に二回観て、二回目のほうが泣いたという、個人的にはかなりツボ映画だった。

 

www.meganetamago.com

 

クワイエット・プレイスを検索すると必ず出てくるクワイエットルームにようこそは既に視聴済みだったが、内容がうろ覚えだった。

最初に観た時より人生経験を積んだ今、この映画がどう自分の目に映るのか気になったので再視聴した。

映画の内容がふざけているようで、とても真剣だったので、わたしも真摯に感想を書く。

 

原作は松尾スズキの小説で2005年下半期の芥川賞候補にもなった作品2007年に本人の脚本・監督で映画化された。
主演は内田有紀、共演には最近めでたくご結婚された蒼井優大竹しのぶ、りょう、そして宮藤官九郎などなど、演技には不安のない面々。
 
舞台は、様々な生きにくさを抱えた人たちが集まる場所、精神科病院の女子閉鎖病棟
原作自体も今から14年前のもので、映画も2007年と10年以上前のものなので、精神的疾患の患者さんの治療に対しての考え方や対応や病院の姿勢など、今とはだいぶ変わっている部分もあると思うし、今改めて観てみると、松尾スズキのおふざけが人によっては不快なシーンもあるかもだし、ポリコレ的にはアウト案件な映画かもしれないとは思う。
 
でも、それ以上に感じるのは、生きにくさを抱えている人に対する強烈なメッセージ。
 
(ああ・・何かこの感情や余韻、身に覚えがあるな・・)
 
と、今ふと思い出したのが、イギリス俳優のリッキー・ジャーヴェイス制作のドラマ、『デレク』とか『アフターライフ』を観た後のような感じに近い。
 
※過去記事一覧
イギリス人も、日本人も、訴えたいことは同じなんだと感じました。
 

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~あらすじ~
フリーライターの佐倉明日香(内田有紀)は、目覚めると窓も何もない真っ白な狭い部屋に居て、体が動かせない状態だった。
何故、自分がこんな状態か思い出せない明日香だったが看護士たちからは、睡眠薬の過剰摂取の自殺未遂のため、また自殺に走らないよう医師の許可が下りるまでこの状態は解けないと言われる。自殺をした覚えもなく、仕事の締切が迫っていたため、すぐにでもここから出して欲しい明日香だったが、様々な事情からしばらくの入院は免れない状態となってしまった。
明日香が居たのは、精神科病院の女子の閉鎖病棟で様々な事情を抱えた患者たちが居た。
摂食障害を含めた強迫性障害や、自傷行為。そこで働く看護士たちや入院患者たちと交流を重ねていくうちに、過去の出来事を思い出し、恋人の鉄ちゃん(宮藤官九郎)からも、睡眠薬を過剰摂取した夜の自分の姿を打ち明けられ、自分の人生と向き合うこととなる。
 

 

ネタバレを知っていても、この作品が必要な人には見るべき価値があると思うので、若干のネタバレを含んだまま感想を綴っていこうと思う。 

 

 世の中には、死んだ方がよっぽど楽な事情を抱えたまま生きている人が居て、半分死に片足を突っ込んでいる人が死なないように、必死になって救おうとする他人がいる。

 

っていうのが、この映画のメインの感想ですので、ネタバレ一切アウトの方は、観てから是非戻ってきてください。

 

前半は、内田有紀がすっごい綺麗でどの角度から見ても美しく、変な服を着ていても、破天荒な感じにしていてもとにかく綺麗で、それをぼんやり眺めているうちに、キャラの立った人たちが登場し、ストーリーも若干おちゃらけた感じで話が展開して、とにかく不思議ワールドで、笑っていいのかダメなのかわらないけど、結果的に不謹慎だけど笑ってしまったりして、すっかり松尾スズキの世界観に引き込まれる。

 

主人公の明日香を演じる内田有紀が、美しいだけではなく、自分が壊れているのか壊れていないのか自覚がない状態のギリギリのラインの状況を非常にうまく演じていて、客観的に見ていると(おそらく、ヤバい)って感じではあるのですが、大丈夫なのか大丈夫じゃないのか判断するのが非常に難しく、精神疾患も病名はあるにしろ『ここからが病気で、ここからが正常ですよー』っていう明確な基準があるわけでもない。

そして、自分も周りも壊れていることに気づかない人ももちろんたくさんいて、依存症とか摂食障害とか、自傷とかそういう行動があって、周りも(この人は、確実にヤバい)ってなり、病院に連れて行ったりするから心の病気は非常に難しい。

実際、わたしもボーダーラインに近いところにいるのかもしれない。

映画内でも入院している患者で『自分は病気でここに居る』ということを心の底から全員が思っているようには思えなくて、逆に『自分は普通なのに、ここに閉じ込められている』と思っている人の方が多いように感じたし、実際そうなのかもしれない。

だけど、『自分じゃない誰か』の手によってあそこに居る人たちが多かったので、まだ恵まれているんじゃないかと思ったこと。

主人公が死にかけているときには助けてくれる恋人が居たこと。

一人だったら確実に死んでいたけど、彼が必死になったことで彼女は生きながらえた。

 

わたしが映画から強く感じたのは、死にたいと思う人に生きていてほしいと心から願う人がいることと、人が命を失うことを、一生懸命止めようとする他人がいることだった。

入院患者たちの悲しさや切なさに焦点が当てられがちな映画だと思うし、実際わたしもいちいち心が痛んだ。

主人公の内田有紀を初め、大竹しのぶ蒼井優が演じていた役などと似たような境遇の人が周りに居たら、どうしていいかわからない。正解もない。そして、自分もああなるかもしれない。

だけど、精神科病棟で働く看護士さんたちは身内でもないのに、患者さんたちに治ってほしいと心から思っているように映画内で描かれていたことに、非常に興味を持った。

お金のためだけではできない辛い状況や精神力が必要な職場だと思うし、特にメイン看護士で登場していたりょうと平岩紙の2人はそれが顕著に描かれていて、人には誰しもその人の命が消えるのをよしとしない人が必ずいる、近しくても近しくなくても。

 

最初は、本当に事故かもしれないと思っていた主人公・明日香の入院だったけど、彼女の過去が掘り起こされるごとに切なさが強まっていく。

大竹しのぶ「あんたは重い女だ、でも生きるって、重いことよ」って明日香に言う。

名女優大竹しのぶの見せ場なのに、わたしは何故か松尾スズキの声で聞こえたシーンだった。

 

例え重さに耐えられなくても、重くて潰されたと大声で叫べばいい。

叫び散らせば、誰かは気づいてくれる。

わかってはくれないと思う、でもわかろうとはちょっとは努力してくれることもある。

みんなひとりだけど、ひとりじゃないっていう映画だったと思う。

 

原作も気になるので、読んでみたいと思います。

読んだら報告します。それでは、また。

 

 

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クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

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